[特集/フリック・バルサ徹底分析 01]これがポスト・メッシ時代の回答! 17戦55得点を生み出す超攻撃的スタイル
長所と短所は表裏一体 ソシエダ戦で得た教訓
しかし、万事うまくいっている訳ではないようだ。フリック新監督の下、絶好調だったバルセロナだが、第13節レアル・ソシエダ戦で今季ラ・リーガ2敗目を喫した。 CLリーグフェーズ第3節のバイエルン戦に4-1、続くレアル・マドリードとのクラシコ(第11節)に4-0。その後もエスパニョールに3-1、レッドスターに5-2と勢いが止まらなかっただけに唐突な敗戦だった。ラ・リーガ12試合40ゴールの強烈な攻撃も初めて無得点に終わっている。 無敵に思えたバルセロナにいったい何が起きたのか。レアル・ソシエダ戦の負けについては明確な理由があった。ポスト・メッシ時代に相応しい戦術を構築したフリック監督だが、その柱となっている中央オーバーロードとハイラインこそ、レル・ソシエダ戦の敗因になっていたのだ。 ラ・レアルは斜めの長いパスを多用していた。サイドチェンジはオフサイドを回避しながら前進するための定石だ。バルセロナの寄せは速いが、そこで発生しうる半身でのキープをサイドチェンジにつなげた。
前進を許せばハイラインにはリスクしかない。サイドチェンジの後のクロスボールもオフサイドは期待できない。無得点に終わったのはラ・レアルがよく守ったこともあり、多くの決定機を決め切れなかった不運もあったが、ヤマルの不在が響いていた。 両翼に置いたハフィーニャとフェルミンはどちらも中央へ入り、幅をとったのはどちらもSB。中央とサイドの両面が効果的だったのに、表の中央しかなくなった。しかも、いつも以上の人数過多。渋滞してからのSBによるサイド攻撃は鋭さを欠いて鈍重に。本来やりたい攻撃とはまるで別物になっていた。 試合は打ち合いの様相だった。久保建英の輝かしいプレイ、60分で一気に4人を交代してパワーダウンを食い止める英断もあった。だが、バルセロナが相手を陥れるために掘った穴に自ら落ちた試合だったかもしれない。 長所と短所は表裏一体。バルセロナといえども裏が出てしまうこともある。しかし、今季のバルセロナが画期的でポスト・メッシ時代の回答を得たのは確かである。ソシエダ戦で得た教訓を活かし、今後へしっかり繋げていきたいところ。今季の爆発力を考えると、その先にはリーグ制覇、はたまた3冠までもが見えてくるかもしれない。 文/西部 謙司 ※ザ・ワールド2024年12月号、11月15日配信の記事より転載
構成/ザ・ワールド編集部