[特集/フリック・バルサ徹底分析 01]これがポスト・メッシ時代の回答! 17戦55得点を生み出す超攻撃的スタイル
グアルディオラ自身、「自分はラファエロの弟子」と言っているように、下絵はすでにクライフが描いていた。それを完成させたにすぎないという謙遜なのだが、現在に直結しているのはペップの作ったチームである。 ペップは黄金時代の幕を開けた。同時にそれはメッシの台頭と重なっている。メッシの存在感はすべてを覆いつくすまでになり、メッシを活かすためにバルセロナのプレイスタイルはしだいに歪んでいった。ただ、それを修正するよりもメッシに依存したほうが勝てることは明白だったので、メッシがチームを去るまでメッシ・システムは続いた。 栄光を築いたのはメッシありきのプレイスタイルだったのだから、メッシがいなければ当然同じ効果は得られない。ポスト・メッシ時代をどうするかは重大な課題になった。 メッシを失って迷走したバルセロナを軌道修正したのは前監督のシャビだ。シャビが行ったのは原点回帰である。そしてフリックは原点回帰したチームに新たなエッセンスを加えてチームを変えた。変えたけれども、よりバルセロナらしくなっている。新しい時代に適応したバルセロナのサッカーを創造したわけだ。
中央オーバーロードによるタレントたちの再生
フリック監督の選択は伝統の[4-3-3]ではなく[4-2-3-1]。ピボーテは2人にしたがパスワークの軸とするアンカーの役割を配置する「クワトロ」の伝統は残している。カサドがその任に就いた。 2人のインテリオールを1人のトップ下に変えているが、実質的にインテリオールは3人に増員している。1人はシステム上トップ下に入る選手。ダニ・オルモ、ペドリ、フェルミン・ロペスが起用されている。2人目はハフィーニャ。左ウイングから中央へ移動する。3人目は2人のピボーテのうち1人。デ・ヨング、ペドリ、ガビが担当している。 つまり、相手ディフェンスラインの手前にはCFのレヴァンドフスキを合わせると4人が集結する。明らかに人数過多。しかし、これが相手の守備を難しくしている。 守備側が[4-4-2]でセットした場合、中央部を守るのは2人のCBと2人のMFの計4人。バルセロナの4人に対して数的優位がない。1人余らせたければ、誰かを中央へ持ってくるしかない。主にSBが絞って対応することになるが、そうなると外側は当然薄くなる。