[特集/フリック・バルサ徹底分析 01]これがポスト・メッシ時代の回答! 17戦55得点を生み出す超攻撃的スタイル
昨季をもって約2年半続いたシャビ体制に終止符を打ったバルセロナ。新たにチームを託すこととなったのが、過去にバイエルン・ミュンヘンやドイツ代表を率いた経験があるハンジ・フリックだ。 フリック新体制のもと、バルセロナはここまで公式戦17試合を戦い、14勝3敗。素晴らしいスタートを切っている。特に圧巻なのがその爆発的な攻撃力。シャビ体制ではどちらかと言えば「守備」に注目されがちではあったが、フリック体制では1試合平均3得点以上(計55得点)を記録しており、「得点力」で違いを生み出している。 フリックは日本代表に引導を渡される形でドイツ代表を退いたが、そもそもクラブ向けの指導者なのかもしれない。代表ではメソッドの落とし込みに限界があるが、クラブではより選手たちの戦術理解度が高まる。結果、異次元の破壊力を持ったチームが出来上がった。やはり彼は現代サッカーのフロントに立つ指導者の1人であることを、この短い期間であっさりと証明してしまった。 レヴァンドフスキ、ハフィーニャなど限界が見えてきたかと思われた選手たちも新指揮官のもとで大復活。フリックはバルセロナにどんな魔法をかけたのか。
原点回帰したチームに新たなエッセンス
フリック体制になってからの大きな変化は2つある。攻撃は中央へ人を集めるオーバーロード、守備は極端なハイラインとハイプレスだ。そしてこの2つはリンクしている。また、この戦術はポスト・メッシ時代をどう生きるかの回答にもなっている。 現在のバルセロナの源流はクライフ監督が率いた「ドリームチーム」だ。 それ以前から技巧的なプレイスタイルはあったものの、形を論理を明確に示したのがクライフだった。[4-3-3]あるいは[3-4-3]の攻撃的なプレイスタイルはオランダ(アヤックス)から持ち込んだものだが、それがバルセロナの伝統と上手くマッチしていた。 圧倒的なボール保持、それを可能にするシンメトリーの配置。パスワークの軸としての「クワトロ」(“4番”のこと。「4」を背負ったグアルディオラがパスワークの中心を担ったことからこう呼ばれる)、両サイドのウイング、変化を生み出す「偽9番」など、バルセロナの戦術的基盤が導入された。グアルディオラ監督はクライフのアイデアをより具現化した。