40歳超えても返済続く? 跳ね上がる学費にかさむ奨学金「子ども産む発想なくなった」
かつての日本社会は、大学を出た人の多くが正社員として勤務し、会社に入れば年功序列で賃金も上がる仕組みだった。しかし、時代が変わってもなお、奨学金の制度は変わらないままでいる。奨学金の問題に詳しい弁護士の岩重佳治さんは、制度を見直すべき時期にきたと言う。 「奨学金が他の借金と決定的に違うのは、将来の返済能力がわからず、借りていることです。しかも学費の高額化で借りる金額が増える一方、生活が苦しい人は増えている。それなのに十分な救済制度が整えられていない。そのため、多くの若者が追い込まれているのです」 そこで、岩重さんは「返済が困難な人への救済」が適切に行われるような制度に変更することが重要だと語る。
「昔の借入額が少ない時代と同じように100%近い回収を目指して運用していることが問題で、2~3割は貸し倒れすることを想定した制度に変えるべきです。一番問題が大きいのは保証人制度で、自己破産しても保証人である親族に負債が渡ってしまうため、自己破産すらできない人がたくさんいる。保証人ではなく、機関保証に一本化することが最優先です。そのうえで、やむを得ない事情で返済が困難になった人に対しては免責するようにすべきです」 以前より格段に跳ね上がった高額な学費に、以前と違って一向に上がらない賃金。そうした状況の中で、奨学金の問題は卒業後から早々に背負わされる借金として若者世代にのしかかる。結婚、出産、育児といった少子化問題にも影を落としている。政府は「異次元の少子化対策」と銘打つのであれば、奨学金のあり方を時代に沿ったものに見直すことが求められているのではないだろうか。
-------- 小川匡則(おがわ・まさのり) ジャーナリスト。1984年、東京都生まれ。講談社「週刊現代」記者。北海道大学農学部卒、同大学院農学院修了。政治、経済、社会問題などを中心に取材している
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