40歳超えても返済続く? 跳ね上がる学費にかさむ奨学金「子ども産む発想なくなった」
岩本さんたちが独自に約3千人を対象に行ったアンケートでは、返済の延滞をしたことがあると答えた人は28%にも及んだ。理由の7割は低収入によるものだった。 「これだけ多くの人が奨学金を借りなくてはならない状況になっているのは、学費があまりにも高すぎるからです」 大学の授業料は1975年には国立で3万6千円、私立で約18万円だったが、2021年には国立でほぼ15倍の約54万円、私立でほぼ5倍の平均約93万円に上昇した。一方で、この30年間、実質賃金はほぼ横ばいで上がっていない。大学進学に際して、奨学金を借りざるを得ない学生が増えたのは収入と学費の支出があまりに釣り合わないためだ。
奨学金返済続くのに「子どもの学費は難しい」
「普通に大学で勉強したいだけなのに、なぜ多額の借金を背負わなくてはならないのか。学ぶことすらぜいたくなことなのでしょうか」 都内に住む美咲さん(仮名、25歳)は北陸地方の出身。高校卒業後は教員免許を取るために都内の大学に進学した。毎月8万円程度の奨学金を借りていたため、4年間で約400万円になった。 新卒で都内の私立高校の教員として就職したが体調を崩して退職を余儀なくされた。次に働いた会社では派遣社員だったが、コロナ禍で解雇の憂き目に遭った。仕事が見つかるまでの数カ月は貯金を切り崩した。今は別の会社で契約社員として仕事をしている。 奨学金の返済は毎月1万7千円で、完済予定は2040年を越える見込みだ。毎月の支払いが滞ることもなく、生活苦を感じるほどの状況ではない。しかし、40歳を過ぎても支払いが続くという心理的な負担は小さくない。派遣社員の仕事も今後が分からず、将来への不安は尽きない。 美咲さんは現時点で「子どもを産むことはない」と決めている。
「子どもを産むという発想がなくなりました。あまりにも現実味がないというか。いまの自分の生活だけでも精いっぱいで、老後をどうやって生きていくのか。不安もすごく大きい。そんななか、子どもを産み育てるなんてとても考えられません。だいたい、学費の借金を返済していないのに、子どもの学費も用意するのは難しいです」 結婚願望はあるが、相手は同じように子どもを欲しいと思っていない人に限ると考えている。 彼女のように、「そもそも子どもを欲しいと思わない」という女性も珍しくなくなっている。2020年度に内閣府が行った調査では、「子どもは欲しくない」と答えた人の割合が8.7%。2015年度の2.9%から3倍も上昇している。