40歳超えても返済続く? 跳ね上がる学費にかさむ奨学金「子ども産む発想なくなった」
3月、自民党内の会議では「地方に帰って結婚したら奨学金の返済を減免、子どもを産んだらさらに減免する」という意見が出されたことが話題となった。しかし、このニュースを目にしたとき、美咲さんはむしろ「絶対に産みたくないという思いがさらに強くなった」と語る。 「もし『出産したら奨学金を減免する』となれば、社会からの『子どもを産め』という圧力が強まります。さらに『地元に帰って出産すれば』となれば『地元に帰ってこい』という圧力も強くなる。より息苦しくなることは間違いありません。該当する人にとっては助かる制度かもしれませんが、そうでない人にとっては差別的で不公平に感じます」
今の日本の実状に合わなくなった奨学金制度
もちろん、奨学金の返済を抱えていても結婚し、出産に至った夫婦もいる。都内で金融系の仕事を営む伊藤綾汰さん(32歳)は山形県から上京し、慶應義塾大学で学んだ。 「学費とアパート代は実家に出してもらっていました。生活費として月5万円を有利子で借りていました」 月5万円でも、4年間借りて利子も含めると約300万円の借金となった。卒業後は毎月1万7千円の支払いを15年間行う計画だが、残りはあと5年で終わりが見えてきた。
一方、同い年の妻も奨学金を借りていた。無利子で月8万円を借り、総額は400万円程度だ。 結婚後もそれぞれが仕事をしてそれぞれで返済をする生活を続けており、お互いの奨学金の存在を気にすることはなかった。子どもは4歳になり、充実した生活を送る伊藤さんだが、奨学金の額がもっと大きかったら、今のような生活ができていたかは分からないと首をひねる。 「新卒では大手金融機関に就職しましたが、最初は手取りも20万円程度しかなかった。途中で転職し、今は個人で仕事をしています。その過程では、経済的に不安な時期もありました。このくらいの支払額だからよかったですが、もし借りた額が2倍だったら金額か返す期間が倍になり、結構きつかったでしょうし、仕事や結婚にも影響が出たかもしれません」