40歳超えても返済続く? 跳ね上がる学費にかさむ奨学金「子ども産む発想なくなった」
日本学生支援機構が2020年度に行った調査によると、親の年間収入が300万円未満の学生では83.9%が奨学金を受けていたが、900万円以上であっても23.8%の人が受給していた。ここまで多くの人が借りざるを得ないのは、現在は学生生活を送るために相当なお金が必要になるからだ。 同調査によると、学費が比較的安い国立大学で自宅通いの学生の場合、平均で学費は約63万円、生活費は約35万円で年間100万円程度必要となる。私立大学の場合、授業料が130万円程度かかるため自宅通いでも170万円程度、アパートを借りると計240万円程度が必要となる。 私立文系で年間240万円を全て工面するためにはアルバイトで月に10万円の収入を得たとしても、月に10万円足りない。すると、毎月10万円、年間120万円の奨学金を借りる必要が出る。貸与の場合、学部4年間だけで480万円の借金となる。これが東京で私立理系となると、授業料はもっと高額になる。都心に住む場合にはアパート代ももっとかかる場合も多い。約半数の学生が奨学金なしでは学生生活を送ることができないのも無理のない状況だといえる。 4月に発足したこども家庭庁が示した少子化対策の試案には「高等教育の負担軽減」の必要性が記され、その中では、奨学金をめぐる対策も言及されている。しかし、貸与型については「(毎月の返済を減らせる)減額返還制度を利用可能な年収上限を325万円から400万円に引き上げる」ことと「出産や多子世帯への配慮など、子育て時期の経済的負担に配慮した対応を行う」という程度しか書かれていない。 これで奨学金の負担軽減策として十分なのだろうか。
一橋大学大学院で学ぶ岩本菜々さん(24)は、2022年から「奨学金帳消しプロジェクト」という活動を他の学生や社会人らとともに始めている。奨学金返済に苦しむ若い世代の相談に耳を傾け、奨学金の見直しを訴える取り組みだ。自身も学生で、数千人の同世代の声を聞いてきた岩本さんには、政府の認識は現実の深刻さとあまりに乖離していると映る。 「子どもを持つかどうかという問題以前に、奨学金問題のほうがまず深刻です。ブラック企業に勤めてしまっても奨学金の返済があるために辞めることができず、無理をして体調を崩してしまう人もいます。相談に来る人の中でも生活自体が困窮している人も少なくありません」