なぜアーモンドアイは”皇帝の呪い”を解き史上初のG18冠を達成できたのか?
東京競馬場で1日に行われた第162回天皇賞・秋(2000メートル芝、G1)はアーモンドアイ(牝5、国枝)が単勝1.4倍の圧倒的人気に応え、史上2頭目の連覇を達成、これにより日本競馬史上初の芝G18勝(海外G11勝を含む)を成し遂げた。「皇帝」シンボリルドルフが持つ7冠を越える”8冠の壁”を過去にテイエムオペラオー、ディープインパクト、ウオッカ、ジェンティルドンナ、キタサンブラックらの名馬が越えられなかったため、“ルドルフの呪い”とさえ呼ばれていたが、アーモンドアイは、そのジンクスをついに吹き飛ばした。
ルメールが感涙
残り400メートル。まだアーモンドアイの鞍上、クリストフ・ルメールは動かなかった。先行するダノンプレミアム、2番手のキセキを睨み4番手をキープしていた。 アーモンドアイのポテンシャルを知り尽くすルメールは、その爆発力を信じていた。 「4」と書かれたハロン棒を過ぎたあたりで手を動かすと、一気に加速。そのまま先頭に立ちゴール板を駆け抜けた。 伝統の一戦で日本競馬史にさん然と輝く金字塔が打ち立てられた。歴史に刻まれた数々の名馬を超える芝G1単独トップの8勝。アーモンドアイが”前人未到”の高みに立った。 最後の直線で共に追撃してきたフィエールマンとの差は半馬身。鞍上のルメール騎手は、ゴールした瞬間、いつものようにパートナーの首をポンと叩いて労をねぎらった。自身は、天皇賞・秋を3連覇、春も合わせて自身が持つ天皇賞の連勝記録を5に伸ばした。だが、これほどの名手でも、余程の重圧を感じていたのだろう。インタビューでは涙を浮かべ、言葉を詰まらせた。 「この馬に乗るときはいつもプレッシャーがかかります。G18勝も達成したかったので、今回もプレッシャーはあった。馬はリラックスしていて、いいスタートが切れた。直線、逃げた馬が早めにバテて坂を上がってからきつくなりましたが、よくがんばってくれた。最後は怖かった」 完璧なエスコートだった。スタートしてすぐに最初のコーナーを迎える東京2000メートルは、かつて“魔のコース”とも言われた。だが、アーモンドアイは課題のスタートを決めると、外めの4番手をスムーズに進んだ。ダノンプレミアムが淡々とした逃げに持ち込み、1000メートルの通過は60秒5のスローペース。隊列に大きな動きがないまま、3コーナーから4コーナーを迎えた。4コーナーでジナンボーが外から馬体を併せようと迫って来たが、あっさりと競り落とす。最後の直線では、残り200メートルで逃げるダノンプレミアムをかわした。 並んで追い込んできた天皇賞・春の勝ち馬フィエールマン、新女王の座を狙ったクロノジェネシスの2頭の追撃を力で封じ込めた。