謎の古代文明タルテッソスはなぜ突然消えたのか、未解読の文字も、2700年前に西欧で最盛期
イベリア半島の発掘調査で明らかになる先住民とフェニキア人の接触
歴史家たちは、紀元前に繁栄していた古代社会タルテッソスがなぜ消えたのかを、今日に至るまで完全には説明できていない。発掘調査により、一夜にして消滅したかのようなこの先進的な多文化文明のことがより詳しく明らかになるにつれ、新たな疑問が生じている。 ギャラリー:謎の古代文明タルテッソス、未解読の文字も 写真と画像21点 ヨーロッパ南西部のイベリア半島の南海岸沿いで勢力を拡大したタルテッソスは、紀元前10世紀に同半島に初めて到達した航海商人の集団であるフェニキア人と強いつながりがあったと考えられている。 フェニキア人は、現在のレバノン、シリア、イスラエル北部の出身であり、熟練した船乗りかつ商人として地中海全域で知られていた。しかし、統一王国を作ることはなかった。彼らは非常に美しい紫色の染料を作ったことから、「紫色」を意味するギリシャ語にちなみ、ギリシャ人によって「フェニキア人」と名付けられたという説がある。 タルテッソスは、フェニキア文化がイベリア半島の先住民の文化と融合して生まれたと考えられている。ただし、フェニキア文化の影響を受ける前からタルテッソスは存在していた可能性があると考える学者もおり、新たな発見によってその議論に拍車がかかっている。
タルテッソスの伝説
物語にタルテッソスが登場するのは、紀元前7世紀半ばまでさかのぼる。 ギリシャの商人コラエウスが、現在のトルコ沖にある故郷サモス島から出航した。エジプトに向かう途中、コラエウスの船は東からの強風にあおられ、地中海を西に進み、ジブラルタル海峡の東端にある岬「ヘラクレスの柱」を越えてしまった。 コラエウスと仲間の船員たちは、ギリシャの商人たちには知られていなかった「商業の中心地」タルテッソスに到着した。コラエウスはタルテッソス人と交易を始め、主に1.75トン以上も集めた銀で大きな利益を上げた。 この旅人の物語は、紀元前5世紀に書かれたギリシャの歴史家ヘロドトスの『歴史』に記されている。この物語が誇張されていることは間違いないが、ヘロドトスはサモス島に一時期住んでおり、そこでコラエウスの冒険談を聞いたのかもしれない。 他の古典文献にも、イベリア半島南部のカディス湾周辺にあったというタルテッソスという町への言及がある。これらの記述から、歴史家と考古学者は、伝説に彩られたこの謎めいた文明の全体像を明らかにしようとしている。