大動脈解離で、40歳代の同僚が突然倒れた 防ぐ手立てはあったのか?…病は気づかぬうちにやってくる
後閑愛実&ゆき味「病棟ものがたり」
病気やケガの治療で入院している患者さんは、何を思い、感じているのでしょうか。看護師の後閑愛実さんが、病棟で起こる様々なドラマや患者さんと向き合う中で感じたことを、ゆき味(み)さん作画の漫画と文章でつづります。 【漫画】健診の結果を生かしていれば……
皆さんは今年度、健康診断を受けられたでしょうか。秋は春と並ぶ健診シーズンです。これから受けるという方もいらっしゃるかもしれません。健診について考えていたら、職場で大動脈解離を発症して倒れた同僚のことを思い出しました。
高血圧だと分かったのに…
40歳代の同僚は数年前、健診で受けた血圧測定で、上が210、下が130と非常に高い状態であることが判明しました。肥満体形だったので運動を始めたとは言っていましたが、薬を飲むことには抵抗があったようです。私たちは治療をするよう勧めましたが、同僚は「症状がないから大丈夫」と聞き流していました。 しかし、仕事中に顔色が悪くなり、座り込むように倒れました。 幸い、倒れたのが職場の病院だったため、すぐに検査ができました。すると、大動脈解離と診断されました。内膜、中膜、外膜の3層でできた血管壁のうち、中膜が裂けてしまう病気で、命に関わります。 すぐにカテーテル治療ができる近隣の循環器病院に搬送され、一命を取り留めました。半年後、無事に職場復帰をしましたが、「本当に死ぬかと思った。今は、血圧を下げる薬をきちんと飲んでいます」と、健診の結果を生かさなかったことを後悔しています。
健診を受ける意義
大動脈解離は、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病が発症要因の一つとなります。 いずれも、数値が高くなったとしても日常生活を送る中では異常に気づくのは困難です。健診では、こうした項目について検査をするため、体の変化に気づくきっかけとなります。 健診では、医師による診察や保健師による聞き取りもあります。生活習慣についてアドバイスをもらえるほか、ストレスがあれば、悩みを聞いてもらうことができます。メンタルの不調が病気の要因になることもあります。健診を受けていれば、必要に応じて、心のケアの専門家につないでもらうこともできます。 私は、医療者として毎年、健診を受けてほしいと思っています。