更年期障害でホットフラッシュの症状がある50歳代女性 ホルモン補充療法を勧めたら…漢方薬の方が安全?
かなこ先生のウェルエイジング講座
加齢を前向きにとらえ、年齢を重ねながら心豊かに生きていく「ウェルエイジング」のコツを、産婦人科医の稲葉可奈子さんが伝えます。 【図解】中高年女性に多い「肺マック症」とは…初期はせきやたん、進行すると肺から出血 無症状の場合も
先日、更年期障害の症状が出ているという50歳代の女性がクリニックに訪れました。ホットフラッシュでお困りということだったので、ホルモン補充療法(HRT)をお勧めしたところ、「ちょっと不安です。漢方ならば安心なので、お願いしたいです」とおっしゃられました。こういう患者さんはけっこう多いのですが、「ホルモン補充療法はリスクがあって、漢方薬は安全」と言えるのでしょうか。
乳がんの発症リスクは高まる?
HRTは、ホットフラッシュなど、更年期障害の症状を抑えるのに一番有効な治療法です。ただ、乳がんの発症リスクを高めるのではないかという不安を口にされる患者さんが多くいらっしゃいます。 HRTを5年以上続けた場合、発症リスクはわずかに上がります。しかし、影響は生活習慣が関わる因子によるリスク上昇と同等か、それ以下です。投与を始めてから5年未満であれば有意なリスク上昇は認められません。 ほかの病気の発症についても関連を指摘した研究があります。例えば、心臓病については、60歳以上、もしくは閉経してしばらくたってからHRTを始めると、発症リスクが高まるとされています。一方、60歳未満でHRTを開始すると、反対にリスクが下がることが分かっています。 また、血栓症の発症リスクに関する研究報告もあります。飲み薬は、発症リスクを高める可能性がありますが、皮膚に貼ったり塗ったりするタイプの薬は、リスクを大幅に低下させます。 HRTは、適切に実施すれば、がんや心臓病といった病気の発症リスクを抑えながら、更年期障害の症状がなるべく出ないようにできる治療法だと言えます。
漢方薬でも副作用が出ることも
一方、漢方薬は、自然由来の成分を使用していて比較的安全とされています。しかし、ほかの薬と同じように、一定の副作用が出ることがあります。たとえば、肝機能障害、腎機能障害、下痢、胃痛、アレルギー反応、間質性肺炎などです。 更年期障害の治療については、「HRTはキケン、漢方は安全」と決めつけず、治療にあたって不安に感じていることは何か、まずは主治医によく相談してほしいと思います。その上で、自分に合った治療法を納得して選択していただきたいです。 更年期の症状は、産婦人科やレディースクリニックで診てもらえます。