「50円の見切り品のバナナを買って…」子どもに自転車も買ってあげられないシングルマザーの“切実な願い”
貧困と孤立…シングルマザー家庭の「体験格差」のリアル
放課後の習い事や、休日の旅行などといった、子供たちが学校以外で得られるあらゆる“体験”ですが、それが得られる子どもとそうでない子どもがいます。そのような子ども達の“体験格差”がいま、現代社会の新しい課題として話題になっているのをご存じでしょうか? 「突然正座になって、泣きながら『サッカーがしたいです』と…」シングルマザーが痛感した“子どもの体験格差”の厳しい現実 体験格差は家庭の収入や、住んでいる地域など、様々な要因から生じてきます。 そこで今回は今井雄介さんの著書『体験格差』をご紹介。子どもを2人もつシングルマザー家庭の事例に焦点を当て、ひとり親家庭における子どもの体験格差の実態に迫りたいと思います。
事例:自転車も買えない
【池崎愛子(いけざき・あいこ)さん 長男(小学生)・次男(小学生)】 デイケアで看護師として働いている池崎さん。二人の子どもがまだ4歳と2歳だった頃、夫の暴力や夜遊びなどが原因で離婚を経験した。 ―池崎さんご自身は子ども時代に何か習い事などされていましたか。 小学校低学年までピアノをちょっとだけ。あとは4年生ぐらいから塾に。 両親は共働きで商店をしていて、時間的な余裕がなかったです。学校のあとに近所の親切なおじいちゃんおばあちゃんのところに行って、晩御飯を食べさせてもらったり。 私の両親は仕事が忙しく学校の行事に来れなくて寂しい思いもしたので、私は運動会とか参観日には必ず参加しています。それで仕事がやりにくくなったり、限られたりもするんですけどね。 ―最近は食費や光熱費も上がっていますね。 色々切り詰めようと思っても、なかなか難しいですね。スーパーでも割引のシールが貼ってあるものを探して買っています。二人とも果物が好きなんですけど、見切り品のバナナが50円とかで売ってたら買ったりします。高かったら今日はあきらめようって。 普通のレストランとかでは食べることがないですね。子どもたちはファストフードが好きなので、たまに買うぐらいです。ハンバーガーとポテトとジュースのセットを一人分買って、単品のハンバーガーをもう一つ買って。ジュースとポテトは二人で半分ずつ。私まで食べると1000円を超えてしまうので我慢します。 ―もし少しお金に余裕ができたら何に使いたいですか。 前は誕生日のプレゼントで百均のおもちゃとかを買っていたんですけど、長男は自転車がほしいみたいで。でも高いですよね。もう3年も待たせています。 体もどんどん大きくなってきているので、服とか靴も。服は支援などでいただけることもあるんですけど、靴はなかなか難しくて。 ―貯金をされたりもしていますか。 ちょっとずつですね。今は自分しかいないので、「もし自分が倒れたら」というのは常に不安に思っています。すごく怖いです。二人がどんどん大きくなっていったら教育費もかかるだろうし、お金がないから行きたい学校を我慢するというのは絶対にさせたくないので。 年齢的な不安もあります。「いつまで働けるのかな」と思ったり。下の子が成人する前に私が定年を迎えてしまうので、そこからまた収入が落ちたらどうすればいいのかなって。 ―出費の中では家賃が一番大きいでしょうか。 そうですね。実は持ち家なんです。主人と結婚したあとに「マンションを買わないと離婚する」みたいに言われて、そのとき私が持っていた全財産を注ぎ込んで買ったんです。 保険も全部解約して、私の親が残したお金も全部使って。マンションが売れたらいいんですけど、音信不通の彼と共同の名義になっているので、手続きができていません。本当は市営住宅とかに移りたいんです。それで食費とかにもう少し回せるようになるといいんですけど、それが今はできない状態なのもきついですね。 家だけが良くて、でも実際の中身は全然整っていない。子どもに自転車も買ってやれない。なんでこんなことになったのかな、って思ったり。すごくしんどいなって。すみません、泣いてしまって……。