給与や待遇はすべて日本人スタッフと同じ--「彼らとやっていく以外に、飲食なんて成り立たない」、吉祥寺・ハモニカ横丁の今#昭和98年
外国人は「わからないから面白い」
「ハモニカキッチン」のカウンターでは、ネパール人のソナ・タマンさん(39)が客と談笑している。柔和な笑顔の安心感は、なんだか小料理屋のおかみのようだ。 「働くのは楽しいよね。お客さんと話していると、時間が過ぎるのあっという間で」 週1回くらい来るという日本人客は、好物だというラムのネギ炒めをつつきながら言う。 「話してると居心地良くて。それに、ほかのお客さんとの会話を見てるのも楽しいですよね」
はるかヒマラヤから来たネパール人が、日本人に束の間の安らぎを与えている。飲食業界に外国人はもう欠かせない存在だ。手塚さんが言う。 「言葉もぎりぎりわかるくらいで、身体ひとつで異国で働くんですよ。あのエネルギーにはかなわないと思う」 老いていくばかりのこの国はますます、外国人頼みになっていくだろう。もっと行政は柔軟な制度づくりをすべきではないか。ビザの種類によって可能な仕事が限られ、例えば店舗管理者が皿洗いをするだけで「違法」になる。もっと働いてもっと稼ぎたいと思っても、労働基準法による制限がある。
「働き手として一緒にやっていく仕組みをつくらないと」 手塚さんは訴える。 しかし、だ。どうしてそこまで外国人に親身になり、面倒を見るのだろう。 「うーん、なんでですかね」 悩みながらも、しばらくしてからこう答えた。 「外国人って、わからないから面白いよね。お互いわからなくて当たり前で、その中でも通じるものができればいいなって」 ハモニカ横丁は今夜も賑わう。常に時代を映し出してきたこの街はいま、アジアの混沌の中にある。これからどう変化し、どんな人たちが行き交うようになるのだろうか。 ___ 「#昭和98年」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。仮に昭和が続いていれば、今年で昭和98年。令和になり5年が経ちますが、文化や価値観など現在にも「昭和」「平成」の面影は残っているのではないでしょうか。3つの元号を通して見える違いや残していきたい伝統を振り返り、「今」に活かしたい教訓や、楽しめる情報を発信します。