なぜギャンブルスタート?阪神がベンチの采配ミスで9回のチャンスを逃して泥沼8連敗
巨人の内野は二遊間を下げて併殺狙いの守備隊形を取った。だが、江越が盗塁を決めたことによりバックホームで封じる前進守備にスイッチ。ここで阪神ベンチのサインは打球の行方を判断してからスタートを切る「ゴロゴー」からバッターがボールにコンタクトした瞬間にスタートを切る「ギャンブルスタート」に切り替わったと見られる。だが、佐藤は、この日、2安打のマルチで7回には、あと数センチで今季1号となるライトフェンス直撃の強烈な二塁打を放っている。 「ギャンブルスタート」のサインは何も打者へ「ゴロを打て」との制限をつけるサインではない。チームによっては打者には「ギャンブルスタート」を伝えず、走者にだけフラッシュサインで伝達するところもある。だが、ここは4番に指名した佐藤を信頼してよかったのではないか。 さらに佐藤の次打者には前日の9回に放った2ランの勢いのまま、1回の先制の2点タイムリーを含む2安打と気を吐く大山が控えていた。一塁が空いたままでは大山との勝負を避けられる可能性もあったが、ベンチが焦って動く状況ではなかった。まして大勢は自滅寸前だったのである。 「ゴロゴー」のサインであれば、近本も帰塁することができていたはず。まだ同点、逆転のチャンスは残っていたのである。 「連敗中は接戦になるほどベンチや選手にプレッシャーがかかりミスを招く」と、巨人、楽天、西武などで参謀を務めた新潟アルビレックスBCの橋上秀樹氏が指摘していたが、連敗中のベンチの心理が、この”無謀な采配”を生み出してしまったのかもしれない。 巨人バッテリーは佐藤に対して全球ストレート勝負だった。しかも大城は徹底してインサイドにミットを構えていた。公式戦に入って再び炙り出された佐藤のウイークポイントではあったが、両チームの“覚悟の違い“が、明暗を分けることになってしまった。決して「運が悪かった」で片づけられるような敗戦ではない。 他にもミスは重なっていた。制球も乱れ、球威もなかった巨人先発、山崎の立ち上がりに近本が二塁打で出塁したが、中野がバントを2度試みていずれもファウルになって最後は三振。糸井、佐藤が四球を選び、大山のタイムリーで2点を先制したが、一気に大量得点を奪っておかねばならなかった。 守っても小川ー坂本のバッテリーは配球面で記録に残らないミスを犯した。巨人がスコアボードに刻んだ5点のうち4点がホームランによる得点である。1回は先頭の吉川に二塁打を打たれ、続く坂本に同点2ランを浴びたが、わずか5球でリードを失った。さらに2回の丸の勝ち越しの一発、3回ポランコに打たれた3号ソロは、いずれも初球で高めに投じたストレートだった。いまさらながら東京ドームの特性はボールがよく飛ぶ“ホームランパーク“である。長打力のある打者への配球については慎重を期さねばならない。特に入りのボールは要注意である。バッテリーは、その原則を忘れてしまっていた。失点を防ぐべき最善を尽くしたとは言えなかった。