【ABC特集】「家がない」「性犯罪に巻き込まれた」・・・悲痛なSOSに向き合う不動産会社の女性社長に密着 居住支援の“いま”
国内ではいま、世帯人数が1人の「単独世帯」が増え続けています。 1980年、全世帯に占める「単独世帯」はおよそ2割。それが来年の2025年にも、4割を超えると予想されています。 いま、「単独世帯」の人の中で、「高齢であること」や「所得が低い」などの事情から、賃貸物件への入居を断られるケースが相次いでいます。こうした自力で家を借りることが困難な人を国は「住宅確保要配慮者」と位置づけ、支援する動きを進めています。
今年5月、17年前に制定された「住宅セーフティネット法」の再改正案が国会で可決・成立。今回の改正法で、新たな役割が期待されているのが、「居住支援法人」と呼ばれる、都道府県の指定を受けた団体です。 物件のオーナーと連携しながら、「要配慮者」への見守り活動、物件紹介、その人の状況によって必要な福祉サービスにつなげる・・・。「居住支援法人」にはそんな役割を果たしてもらうことが重視されています。
大阪府内にはいま、170あまりの居住支援法人があります。上山さんの「啓友エステート」も、実はその一つ。 市役所などを通じて住まいのトラブルを抱えた人からのSOSが日々寄せられ、これまで250件を超える相談に乗ってきました。ただ、相談は増えても紹介できる物件がなかなか増えていかない現状にあります。居住支援の活動に理解を示してくれる物件オーナーを探し求める毎日です。
(啓友エステート・岡田美保さん) 「周りに親戚がいない70歳以上の方々っていうのは、だいぶ断られている。もう頭抱えます。借りられるところあるん?って思いながら何件電話するん?みたいな」 (上山社長) 「私たちのサポートがついています、うちは大阪府指定の居住支援法人です、まで言うけど、それでもあかん人の方が多いね。だから100件電話かけて、2~3件話を聞いてくれればいい方ですね」
家族が突然、居場所を失うケースもあります。6月、上山さんのもとに、ある緊急の相談が入りました。深刻な事態でした。 (上山社長) 「犯罪。娘が性犯罪に巻き込まれてしまって、団地の中に加害者がいて、その家族もいるからすぐに出なきゃいけない。でも引っ越すお金もないっていうシングルマザー。悪化するまでに、どうにもできひん状態になるまでに周りがサポートしてくれる態勢をとれれば・・・」 相談を受けた翌週。上山さんはその被害者家族とともに、ある部屋を訪ねていました。 (上山社長)「階段に気をつけてね~」 転居先の候補になりそうな物件を急いでリストアップし、この日は内覧です。 (子ども)「ここにする!」 (上山社長)「ここはお母さんとみんなでごはん食べる部屋にするんちゃう?」 子どもたちの笑顔が見えてホッとしました。シングルマザーが抱える苦労は、上山さんにもよく分かります。
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