じつは「どちらがいいコーチでしょう」じゃなかったんだ…プロの指導者だけに伝えた「予想外の問いかけ」と、衝撃の答え
ドイツサッカー連盟(DFB)公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)をもち、フライブルガーFCでU-16監督やU-16/U-18総監督を務めるなど、ドイツでの選手育成・指導歴が20年を超えるサッカー指導者にしてジャーナリストの中野吉之伴氏。 スポーツをはじめ、海外での教育・育成のあり方や仕組みづくりに関心をもつ中野氏は今回、ドイツサッカー連盟とドイツプロコーチ連盟(BDFL)の共催で、毎年7月に3日間にわたって開催されている国際コーチ会議に参加した。 ドイツサッカー連盟のA級ライセンスとプロコーチライセンス(S級相当)の保持者のみが参加できるこのカンファレンスで、いったいどんなことが語られたのか。 最適な体づくりと健康管理のための「栄養学」、コーチ一人ひとりの個性を活かした「指導者育成」、育成年代のための「環境づくり」の3テーマに分けてリポートしてもらった。
「優れた指導者」は「どこ」が「どう」違うのか?
世界には、「あの人にはカリスマ性がある」「あの人の統率力にはみんなが魅了される」といった称賛が集まる指導者がいる。現在のサッカー界でいえば、マンチェスター・シティのジョゼップ・グアルディオラ監督が、その代表例だろう。 優れた指導者はいったい、他の人と「どこ」が「どう」違うのだろうか? 果たしてそれは、生来の資質によるものなのだろうか? 「たとえば、ブンデスリーガのレバークーゼンを昨季の優勝に導いたシャビ・アロンソは、疑うことなく超一流の指導者です。彼のようなカリスマ性や他人との関わり方を自然と持ち合わせている人はきわめて少なく、そのため、彼の取り組みやプロセスは誰もがまねできるものではありません」 ドイツサッカー協会とドイツプロコーチ連盟共催の国際コーチ会議でこう話したのは、ローター・リンツだ。ドイツ人スポーツ心理学士で、ドイツのオリンピック強化指定選手のサポートをはじめ、ドイツサッカー連盟でも指導者育成や選手育成に長く関わっている第一人者だ。 リンツは、「指導者育成を考える--誰もがシャビ・アロンソではない」というテーマをもとに、心理学的アプローチで指導者育成のあり方について言及するという、とても興味深い講義をしてくれた。