【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる
操舵/安定性 ★★★★★★★★☆☆
GTやグランツーリスモというのは、じつに柔軟性のあるコンセプトだ。実質的に同じ車名の高額な4シータークーペでありながら、マセラティ・グラントゥーリズモとメルセデスAMG GTのキャラクターはまったく違う。AMGはスポーティさを強調するが、マセラティはもっとラグジュアリーさを重視している。 このクラスでエアサスペンションを使っているのは独特で、AMG、あるいはBMW8シリーズよりはるかにリラックスした走りを狙ったチューニング。乗り心地は波が長く、スポーティさを追求したクルマにありがちなピリピリした感じがない。ロードノイズのレベルもかなり抑えられている。 とはいえマセラティのエアサスペンションは、ポルシェ・パナメーラのそれに比べれば洗練が足りない。ポルシェのアクティブシステムを別にしても、ホイールコントロールは同等に達していない。結果、路面不整での乗り心地は硬めだ。 全体的に、快適なシートとドライビングポジション、比較的低いノイズとゆったりした乗り心地は、グラントゥーリズモをライバルたちより魅力的な長距離移動マシンにしている。 そうはいっても、メルセデスのSクラス・クーペのように純粋な高級クーペというわけではない。そうはいっても、AMG GTのようなボディコントロールや電光石火のレスポンスは持ち合わせていないし、もちろんフェラーリ・ローマとも違うことは言うに及ばない。それでも、グラントゥーリズモは魅力的なドライバーズカーたりうる活気がある。 ハイライトはステアリングだ。エンジニアたちはかなり穏やかなギア比を選び、重すぎる設定を避けた。非常に直観的で、細いリム越しにグリップレベルを教えるフィードバックは敏感だ。 4WD化は、このクルマをトラクション番長にするものではなかった。コルサモードを選ぶと、後輪駆動的に楽しめるバランスがあり、タイトコーナーでは多少のオーバーステアも出る。同時に、GTモードでは期待どおりに安全で地味な走りを見せる。