【詳細データテスト】マセラティ・グラントゥーリズモ 快適志向のGT ただしドライビングも楽しめる
走り ★★★★★★★☆☆☆
先代の自然吸気V8が恋しくなるだろうが、3.0LのネットゥーノV6は十分その代わりを務めてくれる。 純粋なスピードについては、少し前にテストしたメルセデスAMG GT 63に後れを取るが、それもほんのわずかだ。いずれにせよ、これほどの性能のクルマを、英国の公道上で全開にできる機会はめったにない。 ほぼすべての面で、これは本当に速いクルマだ。ややラグがあるデリバリーや、重なりのある本当のエンジン音が、そこにリアルなキャラクターを与えている。低回転では吸気が高まるにつれ唸りをあげ、高回転では血統のよさを感じさせる金属音が増していく。そのサウンドには常に、粗くてざらついたテクスチャーがある。 念入りに設定された8段のギアは、公道上で全回転数を使うことを可能にする。下の4段はクロスレシオで、実際のレブリミットである7200rpmではなく、メーターに表示されたレッドゾーンの6500rpmでシフトアップすると、制限速度へ達する前に3速に入る。 イタリアでのローンチイベントでは、ヘアピンを抜ける際には2速ではややギア比が高く、低回転での元気のなさを避けようとすると1速へ落とす必要があった。ファイナルはもっとショートでも悪くないはずで、当然ながら低回転でのターボのレスポンスが改善されるだろう。 ギアボックスそのものはおなじみのZF製8速ATで、最適な選択といえる。自動変速モードのシフトはスムースで、変速ポイントは賢明。パドル操作に対する反応もクイックだ。コルサモードでは、フルスロットルでのシフトアップでやや不要なジャークが出るものの、ひどく気になるほどではない。 このクルマの有り余るパフォーマンスを考えると、ブレーキは過不足ない程度だ。ペダルフィールは良好で、ドライ路面での平均制動距離が113km/hで44.5mというのも上々。それでも、同じ条件ならAMG GTに負ける。 しかし、加速テストの際に200km/h以上から80km/hまでの減速を何度か行った後で、ブレーキのオーバーヒート警告が出たのは気になる。英国でこんなハードにブレーキングする機会はまずないが、ドイツのアウトバーンではあり得ない話ではない。113km/hからのブレーキテストでは、この問題は出なかった。ただし、70.1mというウェットでの制動距離は納得がいかない。2019年に計測したポルシェ911カレラは、58.2mだった。