「ラーメン8万杯売らないと資金回収できない…」券売機新調、値上げ、個人店に重くのしかかる負担…新紙幣対応は各業界でどれくらい進んでいる? 専門家が解説
モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。6月12日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「新紙幣7月3日(水)に発行 企業の対応は進んでいるのか?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
◆来月に20年ぶりの新紙幣発行
およそ20年ぶりの新紙幣の発行が始まる7月3日(水)まで、1ヵ月を切りました。企業は自動販売機や券売機などの機器の改修を急いでいます。 吉田:塚越さん、まずはこの新紙幣について改めて教えてください。 塚越:7月3日(水)から新紙幣が発行されます。紙幣にはそれぞれ3人の肖像がデザインされています。 10,000円札は「渋沢栄一」。近代日本経済の父と呼ばれ、日本初の銀行の設立に関わったことなどで有名です。 5,000円札は、日本で最初の女子留学生の1人としてアメリカで学び、津田塾大学の創始者で有名な「津田梅子」。 1,000円札は破傷風の治療法を開発したことなどで知られる、細菌学者の北里柴三郎の肖像が描かれています。 紙幣のデザイン変更は2004年以来20年ぶりです。変更の目的は偽造防止の強化と、誰でも利用しやすい「ユニバーサルデザイン」の導入となっています。キャッシュレスも普及しつつありますが、やはり偽造の技術も進んでいくので、偽造防止のためにこれまでも概ね20年ごとに紙幣は変更されてきました。
◆ATMの対応は9割完了、一方で対応が進んでいないところも…
吉田:新紙幣に対する企業の対応は、どのぐらい進んでいるのでしょうか? 塚越:財務省が各業界を対象として今年の5月に実施した調査によれば、発行開始までに新紙幣が使えるようになる機械の割合は、金融機関の「ATM」では9割以上でした。また、小売店のレジや交通機関の切符の発券機も8~9割ほど準備が進んでいます。お客さんが機械に紙幣を入れるコンビニの「セルフレジ」も、対応はほぼ間に合いそうです 一方、対応が遅れているものとしては「飲み物」の自販機。現状の対応済み機械の割合は2~3割程度です。業界団体の「日本自動販売システム機械工業会」によれば、自販機は全国でおよそ220万台あります。 大手飲料メーカーの担当者によれば、新紙幣に対応させるには1台あたり数万円かかるということで、使用頻度の高いところから手をつけているものの、このメーカーでは2025年度末になっても対応できるのは8割程度とのことです。お金も時間もかかるということですね。 吉田:自動販売機には、新500円玉がまだ使えないものがありますよね。 塚越:飲食店の発券機や駐車場の精算機も、今のところ対応できているのは5割程度。とりわけ個人店や小規模チェーンの飲食店は厳しい状況です。そもそも人手不足等への対応で食券を導入している店舗が多いのですが、昨今の食材高騰など、どんどんコストが上がっているなかで、新紙幣に対応する余裕はなく優先順位も低いということです。