「ラーメン8万杯売らないと資金回収できない…」券売機新調、値上げ、個人店に重くのしかかる負担…新紙幣対応は各業界でどれくらい進んでいる? 専門家が解説
◆個人店に重くのしかかる負担
ユージ:発券機を新紙幣に対応するものに替えるとしたら新たな出費になるので、特に個人経営のお店は影響を受けそうですね? 塚越:そうですね。共同通信が取材した都内のラーメン店の経営者は、およそ800万円かけて経営する店舗全店(4店舗)の券売機を新調したといいます。国の補助金を考慮しても半分の400万円は持ち出しで、ラーメンを一杯50円値上げしたのですが、ラーメン8万杯売らないとその資金は回収できないということです。人手不足の影響もあり、発券機は店にとって必需品ですが、値上げによる客離れと板挟みの状態にあるということです。 同じく共同通信が伝えているバス業界も、人手不足や燃料費の高騰で大変な状況にあります。日本バス協会の担当者によれば、バスの運賃箱は1台100万~200万で、新紙幣対応は、事業者によっては億単位のお金がかかる可能性があるといいます。 お金がかかるので無理という場合は、運転手が手作業で新札を旧札に交換しなければならないので、こうなると時間的なロスを含めて労働コストがかさみます。
◆「新紙幣対応の券売機」導入より、費用が安いキャッシュレス対応を進めるところも
ユージ:新紙幣の発行によって、キャッシュレスが進むという見方もありますよね? 塚越:これだけコストがかかるので、事業者や特に個人店の場合は、もう両替機や自動販売機の新札対応は諦めて、導入費用の少ないキャッシュレスに切り替える可能性が考えられます。 日本は来年の6月までに(クレジットカードやQRコードを利用する)キャッシュレス決済の比率を全体の40%にする目標を掲げているのですが、去年の段階で39.3%まで増えており、この流れを促進すると見られます。 ただしキャッシュレス決済の比率は、韓国は9割、中国も8割、アメリカでも5割を超えています。これにならって日本もどんどん進めていきたい狙いです。新紙幣が登場するのにキャッシュレスが増えるというのも皮肉な話ですが、副産物としてキャッシュレスが普及するという可能性は考えられます。