29歳で目指した「絵本作家の夢」、なんと60歳で叶えた…!「還暦の新人」に聞く「大人になってからの『夢』の追い方・叶え方」
夢を夢で終わらせない秘訣
フェーマススクールズ卒業後、いくつかの絵本コンテストへの応募の準備を進めていると、子ども服店に飾っていたみやもとさんの絵を見た客が、絵本作家を目指している人達が集まって勉強している神戸のギャラリーヴィー絵話塾を紹介してくれた。通うには電車で片道3時間の距離があったが、その個性豊かな教師陣と生徒達に魅了され、1年間の受講を決めた。初回の授業は、それぞれの自己紹介からはじまった。 「そこで僕は、絵本作家になりますと宣言しました。昔、聞いた話の受け売りなんですが、夢を実現させるコツとして“夢を叶えたつもりになってみる”というのがあるんです。絵本作家になったらこんな生活かな、こんな気持ちやろうなと想像しているうちに、“なったつもり”になって、自分に自信も湧いてくる。“なったつもり”でいると、不思議なことに周りの人は、もう宮本さん本出してたんちゃうかって勘違いしてくれて、ポスターを描いてくれって仕事を依頼されたことも。そういう依頼は自分の腕を上げる良い機会にもなりました」 絵本作家宣言から十数年。現在も一年に一度、合同でグループ展を企画している絵話塾の仲間たちについにデビューすることを報告すると、皆んな自分ごとのように喜んでくれた。素直にとても嬉しかった。
夢を追う気持ちが折れかけた時
絵話塾に通いはじめて一年が経った頃から、コンテストに応募すると入賞できるようになっていた。それでも、大賞には届かない。みやもとさんは50代になっていた。夢を諦めかけた時はなかったのだろうか。 「気持ちが完全にポキッと折れてしまうことはありませんでした。まず絵や物語を描くことが好きなので、少々嫌なことがあっても、気持ちがすり減るというよりは鍛えられていると感じました。これが嫌々だったり、仕方なく続けていることだと、どんどん心がすり減っていくんじゃないですかね」 もちろん、落ち込むことはあった。 「自信がある作品をコンクールに出して、落選結果を受け取ったその日はやっぱりちょっと落ち込みますよね。でも、その報告を周囲にする時には、やっぱりあそこがあかんかったかなあとか、反省を口にしているんです。つまり自分でも、ちょっと甘かったなと思う点があるんです。そうして反省を繰り返すうちに、今回こそは! と納得のいく作品が生まれるようになりました。そして、今回こそはと思った作品はちゃんと入賞するから不思議でした」 デビュー作となる『あおくんふくちゃん』もそんな自信作でしたか。 「作品に自信はあったんですが、講談社絵本新人賞は僕の中で日本で一番難しい絵本コンテストという印象があったから、僕にはちょっと無理やろうって考えていました。審査が終わって作品が戻ってきたら、別の賞に応募する段取りまで組んでいたんです」 『あおくんふくちゃん』はお人好しの鬼のあおくんと、ちゃっかり者の福の神ふくちゃんが、節分の日に巻き起こすコメディ絵本。鬼も福の神も、登場人物それぞれのキャラクターがとても愛らしいタッチで描かれている。 「作品に登場するキャラクターは、僕が日常で出会う人たちになんとなく似ているんです。ふくちゃんなんか、妻にそっくりで(笑)」