子どもの睡眠問題と発達障害の関係―“誤診”の原因になることも
◇“睡眠難民”救済に「睡眠科」標榜を
スマートウォッチのようなウエアラブルデバイスによって時間だけでなく眠りの深さなど質についても手軽に測定でき、睡眠が“可視化”できるようになりました。測定はできるようになりましたが、一方で問題を抱えた患者さんはどこに相談すればよいのか分からない、行き場がないという“睡眠難民”問題があります。睡眠の問題は元来、精神科の診療領域になりますが、精神科への心理的ハードルが高く、受診につながりません。 そこで私たちは「睡眠精神科」や「精神科(睡眠)」など、「睡眠」を組み合わせて標榜できるよう厚生労働省などと交渉しています。ほかにも睡眠時無呼吸症を診療する呼吸器内科や循環器内科、神経内科、耳鼻咽喉(じびいんこう)科、母子手帳を最初に見る小児科などで「(睡眠)」と表示があれば、相談先が分かりやすくなります。最初の入り口として、そのように「睡眠」を標榜する先生に診てもらい、診断・治療がうまくいかなければ全国に約600人いる日本睡眠学会専門医や、約120カ所ある日本睡眠学会専門・認定医療機関(2024年7月現在)につないでもらうといった睡眠診療の仕組みをつくることが、国民の健康を守ることにつながり、医療費の削減にも貢献できると思っています。 これまで日本人は、睡眠時間を削って働くことで経済成長をなし遂げたり、睡眠を惜しんで勉強して教育レベルを保ったりしてきました。日本人の睡眠時間はOECD加盟国中最短ですが、それでも1日の4分の1程度は眠っています。80年生きるとすると、20年は睡眠にあてていることになり、その時間をよりよいものにすることは人生を充実したものにするために非常に重要なことなのです。
メディカルノート