子どもの睡眠問題と発達障害の関係―“誤診”の原因になることも
◇高校の「午睡タイム」で起きた変化
中高生の睡眠にも多くの問題があります。中高生は8~10時間の睡眠時間確保が推奨されているのですが、8時間寝ている高校生はほとんどいないでしょう。朝は課外授業、放課後はクラブ活動や塾、帰宅後はスマートフォンを見る時間もあるでしょう。さらに通学にもある程度時間がかかります。 私の母校の福岡県立明善高校(久留米市)では20年前から、日本で初めて昼寝の時間をとるようにしました。その際、約1000人の生徒にアンケートしたところ、平均睡眠時間は5時間45分で、9割が「午後の授業が眠い」と回答しました。7時30分からの朝の課外授業に間に合うように5時半ごろには起床する一方、就寝は0時過ぎです。「8時間睡眠せよ」と言っても到底かなわない状況でした。 そこで、昼休みに10分の「午睡タイム」を設定したところ、センター試験の成績やクラブ活動の成績が上がり、保健室の使用が減るという効果が出ました。睡眠不足によるパフォーマンスの低下を軽減できたためと思われます。 大阪府堺市では、睡眠サイクルを朝型にすることで不登校を減らす試みが行われ、成果を上げています。年に一度の「睡眠教育の日」には小中高校で一斉に睡眠の授業があり、睡眠不足が体に与える悪影響を医学的に説明して十分な睡眠をとるよう指導しています。この試みは、教育によるアプローチで睡眠サイクルを朝型にできることの実証だと思います。 生物学的に、ヒトは10代になると体内時計が夜型に移り始め、19~20歳ごろに夜型のピークを迎えたのち、また徐々に朝型に戻ります。夜型になっていく10代で夜にスマートフォンやタブレットなどの光を浴びると、夜型への移行が助長されます。また、塾の教室も非常に明るくなっていて、覚醒レベルが上がるようになっています。コンビニエンスストアも店内が非常に明るく、夜に行くと眠りに悪影響を及ぼします。 体内時計を朝型に保つには、朝の光を浴びることと朝食を規則正しく取ることが重要です。この2つによって、体内時計のずれが補正され、睡眠・覚醒リズムを維持できるのです。