分科会の“緊急提言” なぜいま? 尾身会長が挙げた3つの理由
政府の新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長(地域医療機能推進機構理事長)は9日、緊急で記者会見を開き、「感染が全国的に見ても増加しているのは間違いない。減少要因を早急に強めなければ、いまは『徐々』にだが、『急速な』拡大傾向に至る可能性が高い」と訴えた。
そして政府への緊急提言として(1)いままでよりも踏み込んだクラスター対策(2)対話のある情報発信(3)店舗や職場などでの感染防止策の確実な実践(4)国際的な人の往来に伴う取り組みの強化(5)感染対策検証のための遺伝子解析の推進――の「5つのアクション」を提示。具体的な場面を紹介しながら感染防止策を改めて説明した。
なぜいま?
なぜこのタイミングで緊急提言をしたのだろう。尾身会長は3つの理由があると言う。 まず1つ目。「例えば東京都も全国も感染が一進一退みたいなところがあったが、ここにきて感染が明らかに全国的に見て(増加してきた)」というもの。尾身会長は「北海道、あるいは大阪、奈良、兵庫。あるいは愛知とか岐阜では感染の増加傾向がかなり明らかになったということ(もある)」と、ここにきて新規感染者の報告数が多い北海道をはじめ、具体的な都道府県名を挙げながら感染が拡大していることを訴えた。 2つ目は、「感染していない県が減ってきて、感染の広がりが全国的になりつつある」というもの。「まだ感染(拡大)が起きていないところもあるし、減少傾向になっている県もある」としながらも、「北海道や関西を中心に、しかもいわゆる県庁所在地だけでなく、同じ県の中でも色んなクラスターが色んな所で起きている」とし、一部の人口密集地だけの問題ではなくなってきている状況を挙げた。 そして3つ目は、今後対策を打たずに社会経済活動を活発化させると「急激に感染増加する可能性が十分ある」からだと語った。尾身会長は「3密の場面は分かっていたが、社会経済活動を少しずつ元に戻したいという機運(が出てきた)。これは当然。みんな自粛してきた。そういう中で、みんな感染のしやすい場面は分かっているのだけど(行動が伴わないこともある)」と“自粛疲れ”による反動で行動を活発化させる人が増えることにも一定の理解を示した。 一方で、「相変わらず感染が続いているし、増えてきている。これで感染がある程度(高くない数字で)推移してくれればいいが、何もやらずにそのまま経済活動(を進めるとなると)、感染(者数)を上に引き上げる要素が当然ある」と説明。「我々、(会議体の名称が「専門家会議」だった)2月ころからやってきた者としての責任で、いま何をやるべきか(考え)、政府に提言すべきだと(の結論に至った)」と述べ、緊急提言を出した背景を明らかにした。