仕事ができないのを環境のせいにする人への対処法
相手の立場に立って想像する
例えば、本人の訴えの中に、「私がミスをするたびに、そのお局が鬼の首でも取ったかのように指摘してくるんですよ。それも毎日何回もですよ。やってられませんよ」というのがあった。 自分がミスをするたびに鬼の首でも取ったかのように指摘してくるというのは、確かに気分の良いものではないかもしれない。でも、毎日何度もそういうことがあるということは、毎日何度も仕事でミスをしているということでもある。いくら注意しても毎日何度もミスをする人物がいたら、どんな気持ちになるだろうか。そのような人物をその都度何度も注意しなければならない立場の人は、どんな気持ちになるだろうか。そういったことに想像力を働かせるように促す必要がある。 つまり、職場の雰囲気が悪いと感じる場面を振り返るように導くのである。なぜ雰囲気が悪いと感じるのか。なぜ毎日何度も注意されてしまうのか。注意する人がなぜ感じが悪いのか。つまり、メタ認知を働かせて、自分が注意される場面を振り返る、それに加えて相手の立場に立って毎日何度も注意する側の気持ちに想像力を働かせる。 さらには、ミスをして注意された場面で、自分自身がどんな反応をしているかを振り返るように導く。 このようにメタ認知を働かせることによって、自分の感じている職場の雰囲気の悪さの理由として、以下の2点があることに気づいてもらう。 (1)自分自身のミスが非常に多いこと (2)注意されたときの態度が良くないこと これに気づかず、モチベーションが上がらないのは職場の雰囲気の悪さのせいだと思っている限り、決してやる気にはなれないだろう。 だが、自分が感じる職場の雰囲気の悪さをもたらす要因として、自分自身のミスの多さや注意されたときの態度の悪さがあると気づくことができれば、状況改善への一歩を踏み出すことができる。 そうした気づきを前提に、まずはミスを少なくするように気をつける必要がある。それでも一気にミスがなくなることはないので、万一ミスをした場合は、「すみません、これから気をつけます」と謝罪と改善の気持ちを示す必要がある。こうしたことに気づくことができれば、職場の雰囲気の悪さを嘆いていた頃と違って、モチベーションを上げて仕事に集中できるようになるはずだ。 いきなり仕事力が高まるわけではないので、相変わらずミスをすることはあったとしても、ミスを少なくしようと頑張っている姿が見えてくれば、周囲の注意する側の気持ちも和らぎ、Aさんが感じる職場の雰囲気も好転していくことが期待できる。 そうした方向に導くように、丁寧に対話を重ねていくことが大切となる。 日経プレミアシリーズ『「指示通り」ができない人たち』 「できる人」のようにふるまって迷惑をかける人、状況の変化に対応できずパニックになってしまう人、「指示通り」に動くことが難しい人……。こうした職場にいる人たちを紹介しながら、その改善策も一緒に考えていく。 榎本博明著/日本経済新聞出版/990円(税込み)