アパレルブランド「REINA IBUKA」が紡ぐ、秩父の伝統工芸
ーパリと秩父には共通点がないように思えますが、美しいものは両方にあるという意味で共通しているんですね。 そうなんです。パリは東京に比べてたくさんの自然が身近にあります。植物園や公園もたくさんあり、大好きなパリ植物園の近くにずっと住んでいました。 このアトリエにあるハーブガーデンで庭いじりをしていると、鳥のさえずりが聞こえ、パリのアパルトマンにいるような錯覚を起こしたり、ここから太陽が沈むのを見るとパリのセーヌの橋を歩いた時と同じ夕日なのではないかと思ったりします。 パリでは大好きなものに囲まれていましたが、ここ秩父にはパリにはない大きな自然がすぐ近くにあり、自分が自然の中で生きていると思わせてくれます。
今年の展示会で、秩父太織で使用している繭を生産する「影森養蚕所」の見学体験も一緒に組んだんです。養蚕所の後にアトリエで秩父太織の原点の居座機(いざりばた)等の映像も流し、作品を見ていただきました。 服の原料を知り、お蚕への尊さ、養蚕業というもの、昔から培われている地域での循環、を見ていただき、お蚕の神秘的な美しさ、昔ながらの人間の営みの美しさを通して、人間として大切なものを考えるきっかけになればと思ったんです。 最後には皆さんとお話をし、それが伝わったと感じてうれしかったです。また来年の展示会でも行いたいと思います。
ーこれまで販売されたコレクションや製品についても教えてください。 現代の新たな表現技巧を吹き入れる秩父銘仙織元「新啓織物」の反物シリーズで、最初に作った作品になります。
ほぐし織りによる裏表のない深みのある色調で、月のみちかけるさまが表現されています。 このコートも先ほどの月の満ち欠けのコートと同じ頃に作ったものです。
秩父太織の糸作り技術に北欧織のエッセンスを入れた「Magnetic Pole」 のレース織りシリーズです。 新コレクションでは「ちちぶふとり工房」の職人とともに試行錯誤し茜で染めた糸を基調としたオリジナル生地を織ってもらい、伝統をアップデートしたネオ秩父太織の作品も展開しはじめています。職人さんには手間をかけてしまっていますが、それだけ美しいものができます。 ベストやネクタイなど、メンズアイテムも少しずつ増えていて、地元のピアニストやバーテンダーの方をはじめ地元の方も着用くださり、皆さまに秩父シルクを紹介してくださるのはとてもうれしいことです。