クリスマス前に考えたい「食品ロス」 名古屋の「街のケーキ屋」が取り組む対策は?
間もなくクリスマス。洋菓子店をはじめコンビニやスーパーには続々と予約が舞い込み、イブには大量のクリスマスケーキが陳列される時期だ。しかし、クリスマスケーキや節分の恵方巻きに代表されるような期間限定商品の「食品ロス」の問題が、近年、クローズアップされてきている。そんな中、早くから期間限定商品の食品ロス対策を意識してきた洋菓子店が名古屋市にある。「もったいない」から生まれたユニークな商品の誕生秘話などを、その店のオーナーパティシエに聞いた。
カットされる「スポンジの上部」が大量ロスに
名古屋市千種区の市営地下鉄「自由ヶ丘」駅前。大学や大きな病院もある落ち着いた住宅街に店を構える「パティスリーアングレーズフィーユ」は今年、創業13年目。10月には内外装を全面リニューアルして、ガラス張りの明るい店になった。 「街のケーキ屋」として地域の人々に親しまれているのはもちろん、昨年末をもって活動を休止した5人組の人気男性アイドルグループの名古屋公演で差し入れに利用されるなど、「知る人ぞ知る」名店だ。最近ではスイーツの本場と言われる神戸のイベントに出たり、地元名古屋の徳川美術館の敷地内にある料理店に国宝「源氏物語絵巻」にちなんだ創作スイーツを提供したりして評判を高めている。 普段は看板商品のレモンパイやショートケーキが主力商品。クリスマスケーキと同じような形のホールケーキも、誕生日用などに販売しているが、せいぜい一日6、7台だ。それがクリスマスにはイブと当日合わせて例年は600台、今年は700台に跳ね上がる。ケーキ店にとっては欠かせない稼ぎ時だが、その分、出てくる「ロス」の量も半端ではない。
「この仕事を始めたときから、ずっと食材のムダが気になっていました」 オーナーパティシエの小田原益広さんは打ち明ける。 ホールケーキのベースになるスポンジ生地は焼き上げ後、ふくらんだ上の部分を平らにカットしてからデコレーションする。そのため1台つくるのに必ず1枚のスポンジの「ロス」が発生する。4号は直径12センチ、8号なら直径24センチ。その大きさで厚さ1センチほどの丸いスポンジが、普通なら製造現場で廃棄されてしまうという。 「洋菓子店では食品ロスは必ず発生します。できるだけ廃棄を減らして有効活用すべきなのですが、クリスマスシーズンはその量が多過ぎて、追いつかない」