においはすごいが可能性もすごい 「ギンナン」グルメ化に励む町
木の葉が赤や黄に色づく秋。中でも、街路などでよく目にするイチョウは、黄色い扇形の葉が美しいですが、枝につくギンナン(銀杏)の強烈なにおいに閉口した人も多いのではないでしょうか。 <愛知>祖父江イチョウ、色づく 「台風被害は限定的」 そのギンナンの生産量が全国1位で、地域ブランドにも登録している愛知県稲沢市祖父江町。料亭などで出す高級品だけでなく、近年は菓子や麺、日本酒も開発し、あのにおいを昇華した「ギンナングルメ」の開発に余念がありません。 秋の味覚ギンナンの不思議と、その産地の奮闘ぶりを紹介します。
ブランド化された、質の高いギンナン
好きな人にとっても、そうでない人にとっても「たまらない香り」のギンナン。ネガティブな表現もされる特有のにおいですが、これを町の名物にして地域ブランドにまで高めているのが、祖父江町の「祖父江ぎんなん」です。 2009年に特許庁から地域団体商標に登録され、JAや地域行政、生産者などが一体となってブランド価値を守っています。 その特徴は、粒の大きさや中身の密度です。 2Lや3Lよりもさらに大きい特3Lサイズを設け、規格を6段階で表示。この地発祥の大粒で丸みのある品種「久寿(久治)」なども出荷しています。 大粒でも殻を割ったらスカスカだった、ということがないように、塩水につけて比重を調べます。水に沈む、中身のしっかり詰まったものだけが「祖父江ぎんなん」を名乗れます。 そもそも、ブランド化を図ったきっかけは何だったのでしょうか。 「祖父江ぎんなんブランド推進協議会」の事務局があるJA愛知西の百井伊智郎さんに聞きました。 「産地が新潟、茨城、大分、福岡、岐阜など各地に広がってきたことがあります。その中で、昔から作り続けてきた祖父江のギンナンの価値を守りたいと思ったのです。低価格競争をせず、消費者に選ばれるにはどうしたらよいかと考えました」。 その答えが、品質の高さでした。当時、生産者が約170人いた中で、統一基準をどのように設定すればよいかを1~2年かけて話し合い、地域団体商標の登録にこぎつけました。粒の大きさや密度に加え、傷や汚れなどの見た目にも審査基準を設けました。 こうしてブランドとなった「祖父江ぎんなん」は、一流料亭でも高評価を得ています。