クリスマス前に考えたい「食品ロス」 名古屋の「街のケーキ屋」が取り組む対策は?
「切れ端」商品、徐々に受け入れられ定番に
材料も手間もかけて作ったケーキ。その一部なのに、捨てるのはもったいない。小田原さんは自分の店を構えてからすぐ、スポンジの「ロス」をなくす方法を考えた。 「味も食感もよりよくするために、スポンジを細かく切って生クリームとシロップを混ぜ合わせました。それを、大福の皮など、和菓子の材料となるモチモチとした食感の求肥(ぎゅうひ)で包んでみたんです」 色は真っ白、形はあえてコロンと丸いままにした。その見た目から「ウサギノシッポ」と名付けて商品化。値段は180円と手頃に抑えた。
「販売し始めた12年ほど前は“切れ端”を使ったなんて言うと、あまり好感を持たれませんでした」 しかし、味や食感には自信があった。食べてもらうと「おいしい」「初めての食感」と評判に。子どものおやつや個数がたくさん必要な客に求められ、現在は一日20個ほどが売れる定番商品となった。ハロウィーンの時期には「オバケノシッポ」と遊び心を効かせ、大粒のイチゴを入れた「ウサギノシッポプレミアム」をつくるなど、バリエーションも増やしている。 切り取ったスポンジは冷凍保存し、大量に作ったらストックしておける。クリスマスに生まれる600枚以上のロスも後日、「ウサギノシッポ」に生まれ変わる予定だ。 さらに、デコレーションに使うフルーツも残ったら砂糖と煮詰め、自家製のジャムに仕上げている。愛知県産のイチゴやキウイ、宮崎県産のヒュウガナツなど、各地の農家が大事に育て、パティシエとして自分が選び抜いたものを、できるだけ捨てずに生かしたいと思うからだ。
「ここ最近で世の中の受け止め方も変わってきました。SDGs(持続可能な開発目標)や食品リサイクル法では、食品廃棄物の抑制や再生利用が取り組むべき課題とされています。捨てずに有効活用することが評価される時代になって、本当によかったと思います」 小田原さんは満面の笑みを見せた。 今後の小田原さんの目標は「子ども食堂」との連携だ。 「ウサギノシッポなどのムダをなくしたケーキを子ども食堂に持っていったり、一緒にケーキを作ったりして喜んでもらいたい。目指しているのは家族や友達と囲むテーブルにあり、自然と顔がほころぶようなケーキ。パティシエの技術を使って、食品ロス削減だけでなく、食事支援や地域交流にも貢献していければと思います」