大規模伐採ではなく「自伐型」林業を――100年、200年の「山」をつくる挑戦者たち
おもな収入源は伐採と作業道
宮田さんが2016年に設立したきときとき隊のメンバーは現在5人。林業未経験者もいるため、丁寧に指導する。おもな収入源は間伐した木の販売と、福井市から出る「作業道づくり」の補助金だ。 作業道は林業生産に不可欠で、道をつくった業者には自治体から補助金が支給される。だが、自伐型林業がつくる道幅の狭い作業道は、補助金の対象外になることが多い。それを福井市は、2020年度から支給対象を自伐型林業にも広げ、作業道1メートルにつき2000円を支給するようにした。1日10メートルの作業道作設で、2万円が業者や団体に支払われることになる。移住したばかりの土江さんは、10月は18日稼働し、手取りの支給額は21万6000円だった。 このほか、近隣の住民から木の伐採を頼まれたり、林業研修会の講師を依頼されたりすることもある。宮田さんは言う。 「僕が一人で原木生産を中心に自伐型林業をやれば、年間500万~600万円の収入を得られる。(メンバーは)技術がついて環境が整ったら、どんどん自分でやってほしい。ただ、林業をやっているのはお金を稼ぐためだけではないんです。林業を通じて山を守る人が増えたら、地域が元気になっていく。僕は山を守る人をたくさん育てたい」
自伐型林業に注目した佐川町
日本の植物学の父・牧野富太郎の生まれ故郷である高知県佐川町。来春のNHK朝の連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデルになり、町は今、牧野ブームの到来に期待が高まっている。 佐川町は2012年に自伐型林業を地域再生の柱に位置づけ、移住者を集めてきた。 林業は重労働で、労働災害の発生率は全産業平均の約9倍。さらに自伐型林業では、技術の習得に長い年月がかかる。そこで町は、都市部の人が地方に移住して活性化に取り組む「地域おこし協力隊」の制度に着目した。佐川町産業振興課の下八川久夫課長はこう話す。 「14年の第1期生募集の段階から『自伐型林業による地域おこし』を前面に出し、採用活動をしました。最長3年の在任期間のうちにプロの林業家から技術を習得できるようにするためです。これまで26名の任期満了者がいますが、16名が町内に定住し、うち15名がそのまま林業に従事しています」