国の予算はどう作られているのか? 行政学者が解説
新型コロナウイルス感染症対策や経済対策を盛り込んだ2020年度の3次補正予算が衆参両院で可決、成立した。20年度の当初予算は約102兆円だったが、その後コロナ対策で2回の補正予算を組み、3次補正でさらに21兆8235億円が追加された結果、約175兆円という、当初予算の1.7倍を超える空前の規模となった。公共サービスなど私たちの生活に直結する予算だが、予算編成は「奥の院」で行われるというイメージが強い。実際にはどのように作られているのだろうか。(行政学者・佐々木信夫中央大名誉教授)
国家予算は収入とその使途(支出)に関する計画を金額で表示したものだ。その予算を編成するのは内閣であり、内閣は作成した予算案を国会へ提出し審議・決定を求める。 政府の活動を財政の視点で捉えると、「plan→do→see」つまり(1)予算作成(2)執行(3)決算・検査――の過程を経る。このサイクルは毎年繰り返されるという意味から「予算循環」とも呼ばれる。決算検査で指摘された事項は翌年の予算編成に反映され修正されていく。
「本予算」「補正予算」「暫定予算」
予算の作成過程は一般に「予算編成」と呼ばれる。予算編成は、原則として新しい会計年度が始まる以前に完了しなければならない。日本の場合、会計年度は4月に始まり翌年3月に終わるので、新年度予算は前年度末の3月31日までに国会の議決を経ていなければならない。このときまでに予算が成立しないと、公務員給与も生活保護費も1円たりとも支払うことができない。 政治状況など何らかの事情で3月末までに新年度予算の成立が難しい場合、本予算が成立するまでの1~2か月間の「暫定予算」を編成し、これを国会に提出しその議決を求めることになる。もとより、この暫定予算は後に本予算に組み込まれる。 予算には、年度当初に組まれる「本予算」と、その後追加される「補正予算」がある。なぜか日本は毎年秋に補正予算を組むのが常態化している。見込みより歳入増になる場合も補正予算は組まれるが、いまの日本ではそうした状況は想定できない。補正予算といったら歳出の追加を行う場合が多く、結果、国だけでも1200兆円近い債務残高(借金)が累積している。これは国民に対する税金の前借証書を意味する。