〈帝国ホテル 寅黒〉は、数少ない星をもつホテルの日本料理店らしく、極上の美食体験ができる!
椀物は“鱧真丈 松茸 黄菊 三つ葉”。先に繊細な出汁を飲んでから、上味あふれる鱧の真丈を合わせて食べると、より美味が増す。上にあしらわれた菊の花と糸三つ葉は、色合いが鮮やか。
“真鯛 生海苔 醤油 蒸し鮑 肝ソース 芽葱”は、品よく脂がのった真鯛に、生海苔のフレッシュな香りがよく合う。蒸し鮑は出汁の餡が出色で、添えられた肝のソースが乙な味わい。
焼物の“塩すっぽん 黄韮 柚子胡椒味噌”は、骨を取ってあって食べやすいので、ホテルの雰囲気を損なわず、品よく慎ましやかに食べられる。すっぽんの繊細な妙味が感じられ、黄韮や柚子胡椒味噌が心地よいパンチ。
中皿の“穴子 飯蒸し 海苔 赤山椒”は、趣向を凝らした飯蒸し。蒸した米の上には衣をつけて揚げた穴子がのせられ、自分で海苔を巻いて巻物にする。穴子のエネルギッシュな至味が、米と海苔に寛容に包まれ、山椒を半年間熟成させた“赤山椒”の異香によって、華やかさをまとう。
冷物の“伊勢海老 焼き茄子 鰹クリーム”で一休み。表面をそっと炙った伊勢海老と焼き茄子は、冷たいグラスの中でも香りが立ち、旨味も十分。花穂紫蘇や柑橘のジュレが、口の中を落ち着かせてくれる。
“牛ほほ 椎茸 醤油餡 和辛子 白髪葱 七味”は、黒毛和牛の頬肉のとろけるような食味と椎茸の滋味が互いを引き立てあっている。濃厚な醤油餡は、味のしっかりとした頬肉と椎茸の食味を深めてくれる。岩手県の白髪葱は、シャキシャキ感とフレッシュ感が出色。
鷹見さんの地元の特産品を用いたのが、“鹿沼蕎麦 雲丹 塩昆布 紫蘇胡瓜”。豊かな香りをもち、歯切れのよい鹿沼蕎麦に、口溶けのいい雲丹や食感のいい胡瓜を合わせた。塩昆布のさりげない塩味も素晴らしい。
食事は、土鍋で供される“天然舞茸と秋鮭のご飯 いくら”。天然舞茸の閑雅な味わいと、秋鮭の俊味が存分に感じられ、仕上げにかけられた、たっぷりのいくらが非常に贅沢。
甘味は“ぶどうアイス 巨峰 ジンゼリー 松の実”と“椰子の白わらび餅”。前者はぶどうアイスがさわやかで、炒った松の実の香りが秀逸。ジンのゼリーが大人の香味をもたらす。