岩下志麻「夫・篠田正浩と19歳で出会い、マンボを踊って〈この人だ〉と。結婚を決めたのは〈女優をやめろ〉と言われなかったからかも」
「女優の結婚=引退」が当たり前だった時代、映画監督の篠田正浩さんと結婚し、仕事を続ける道を選んだ岩下志麻さん。夫と二人三脚で映画界を牽引してきた彼女が、結婚生活を通して得たものとは (構成:篠藤ゆり 撮影:浅井佳代子) 【写真】花柄のロングドレスで凛とした立ち姿の岩下さん * * * * * * * ◆映画会社から大反対にあって 篠田と結婚して57年――そんなに経つのですね。びっくりしちゃいます。(笑) 篠田と出会ったのは19歳の時。その後、彼が監督した映画『暗殺』への出演が結婚のきっかけになりました。撮影の打ち上げでナイトクラブに行き篠田とマンボを踊っていたら、突然思ったんです。「あ、私この人と結婚する」って。 それで踊りながら「私、監督さんと結婚しそうな気がします」と言ったら、彼はプイッと席に戻ってしまった。 後から聞いた話ですが、篠田は「清純派の女優だと思っていたのに、あんな不良だとは知らなかった」と怒っていたそうです。(笑) ただ、当時の私は結婚願望ゼロ。束縛されるのが嫌いでね。篠田のことは尊敬していて、撮影中に何度か食事に行ったものの、恋愛感情はありませんでした。ですから、まさに直感としか言いようがないのです。
その後、特に何もなく時間が過ぎましたが、ある日、仕事でヨーロッパを訪れていた篠田から手紙が届いて。向こうで高熱を出したらしく、書き殴ったような字だったのです。いつもは理路整然としているので、その乱れた手紙になぜか心を打たれたのね。 しかも、帰国後に素敵なハンドバッグをお土産にくれたんです。もしかしたら、私の言葉が頭のどこかにこびりついていたのかもしれませんが(笑)。それがきっかけで篠田との交際が始まりました。 結婚を決めたのは、「女優をやめてくれ」と言われなかったからかもしれません。当時、女優は結婚したら引退して家庭に入るのが当たり前でしたが、篠田は「結婚生活を肥やしに、女優としてもっと大きくなってほしい」と言ってくれました。そういう人でなければ、きっと私も結婚を決意しなかったでしょう。 篠田は、初期の作品では自立した女性を多く描いています。そういう部分でもフィーリングが合ったのかもしれません。彼が描く女性を演じるのは、気持ちがいいし楽しかったですよ。 ところが当時、私は忙しい時期で、先々の作品を何本も抱えている状態。松竹の重役さんが毎日うちへ訪ねてきて、「なぜ一人の男の所有物になるのだ」と翻意を迫るのです。株主さんまで説得に来たので、母は驚いていました。 でも、あまりに激しく反対されるものだから、かえって「結婚してみよう」と思っちゃったのね。(笑)
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