公共図書館数2118から30年間で3310に増 サービス向上、試行錯誤の知の殿堂
公共図書館の数と利用者が伸びている。直近30年で図書館数は1・5倍以上に増えた。新たな建設が目立つのは大都市ではなく地方。単に本を貸し出すだけではなく、人が集まる場所に-。地方創生や地元密着などを掲げ、「知の殿堂」とされる図書館を舞台にした「ルネサンス」が手探りで続いている。 【写真】「みんなの森 ぎふメディアコスモス」内にある岐阜市立中央図書館。天井は岐阜県内産のヒノキが使われ、つるされたグローブと呼ばれるドーム状の展示空間が並ぶ 天井で格子状に組まれた岐阜県産の東濃ヒノキの香りが漂う。「ママ、絵本が読みたい」「積み木をやっていい?」。親子連れの楽しそうな声が響く。岐阜市立中央図書館(岐阜)では日常風景だ。 同館を含む「みんなの森 ぎふメディアコスモス」は平成27年に開館。中核となる図書館が掲げるのは「ここにいることが気持ちいい」「ずっとここにいたくなる」「何度でも来たくなる」だ。「グローブ」と呼ばれるドーム状の傘の下にスペースが設けられ、学生や調べ物をする会社員らも詰めかける。立地は織田信長が天下布武を掲げた岐阜城の近く。観光客の姿もあり、施設全体の利用者は昨年度131万人に達した。 「親子連れスペースに対して『うるさい』といった苦情はない。子供の声は未来の声ですから。『図書館デビュー』という言葉もあります」。同館の長尾勝広館長(51)は笑う。その上で「県立図書館は専門書があり静か。楽しく過ごすならこっち。選択肢があるのは市民にとっていいこと」と話す。 地方を中心に図書館の新設は続いている。社団法人日本図書館協会によると、バブル崩壊後の平成5年に公共図書館は2118だったが、30年後の昨年は1・56倍の3310に伸びた。博物館や劇場も増えてはいるが、図書館ははるかに高い増加傾向を示す。 関係者は背景について、不景気による書籍購入の減少で図書館利用が増加▽既存図書館の老朽化による建て替え▽「知財立国」を掲げる政府の補助金-などを挙げる。「橋や道路は反対されやすいが『図書館を作る』というのは反対されにくい」という。 岐阜以外の地方でも工夫を凝らす。都城市立図書館(宮崎)は市内中心部にある百貨店を改築し、人を集める舞台を再構築した。紫波(しわ)町図書館(岩手)は地元密着を掲げ、地場産業である農林業分野の図書を並べ、住民に図書館の必要性を訴える。 一方、大都市も眠っているわけではない。平成19年から千代田図書館(東京)は公立としては最も遅い午後10時まで開館。昼夜逆転で人口が変わる地域で会社員のニーズをつかんだ。