なぜ京都サンガは12年ぶりのJ1昇格を果たせたのか…パワハラ退任の過去がある指揮官が植え付けた挑戦のメンタル
2010シーズンを最後にJ1の舞台から遠ざかっていた京都サンガが、今シーズンから指揮を執る曹貴裁(チョウ・キジェ)監督のもとで12年ぶりのJ1昇格を果たした。 明治安田生命J2リーグ第41節の11試合が28日にいっせいに行われ、敵地フクダ電子アリーナに乗り込んだ京都はジェフ千葉と0-0で引き分けて勝ち点1を獲得。通算勝ち点を「83」に伸ばし、4連勝をマークしたヴァンフォーレ甲府に「79」と迫られながらも、最終節の1試合を残してJ1へ自動昇格する2位を確定させた。 指導の一部がパワーハラスメント行為と認定され、J1へ3度昇格させた湘南ベルマーレ監督を2019年10月に退任。日本サッカー協会(JFA)から科された1年間の公認S級コーチライセンス停止処分を経て復帰した52歳の指揮官が、生まれ故郷のクラブを攻守両面でハードワークを惜しまない闘う集団へ変貌させた手腕を追った。
「京都で始めた新しいフットボール」
7分が提示されたアディショナルタイムを経て、千葉とのスコアレスドローを告げる笛が敵地に鳴り響く。自身の52回目の誕生日だった1月16日の始動から317日目。京都をJ1昇格へ導いた曹監督は、両腕を空へと突き上げて喜びを爆発させた。 「自分は指導者としても人としてもまだまだ未熟ですけど、京都に来て挑戦し始めた新しいフットボールに、選手たちが見事に応えて結果を出してくれた。選手たちの努力の賜物であり、彼らから学ぶことが本当に多かった1年でした」 2000年代こそJ1へ3度昇格したものの、2011シーズン以降はJ2へ定着。2015シーズンは17位、2018シーズンには19位に低迷していた京都を生まれ変わらせるための改革は、周囲を驚かせた新キャプテンの指名から幕を開けた。 恩師である曹監督を追うように、今シーズンに湘南から京都へ移籍。戦いの舞台をあえてJ1からJ2へ変えた26歳のMF松田天馬は、サッカー人生でキャプテンを務めた経験がなかった。まさかの大役を担った今シーズンを、自嘲気味にこう振り返る。 「最近も馬鹿みたいに責任を感じてしまい、本当に上手くいかない時期もあった」 しかし、湘南時代から松田の性格を知り尽くしている曹監督は、いま現在の京都に最も必要な存在だと迷わずに判断。新加入ながらもキャプテンを託した。