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 「トランプを抱き込め!」 安倍総理対文大統領の「訪米決戦」の行方は!?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
いつ向き合うのか?安倍総理と文在寅大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

文在寅大統領が訪米し、現地時間(22日)午後ニューヨークに到着した。文大統領の訪米は大統領就任(2017年5月)以来、6度目となる。

韓国大統領の9月の訪米は主に国連総会出席にある。今回も同様だ。文大統領の国連総会での演説は25日(現地時間24日)に予定されているが、韓国の大統領としては初の3年連続の演説となる。

しかし、今回は、過去2回とは異なり、国連総会に出席し、演説するのは副次的なことであって、最大の目的は明日24日(現地時間23日午後)に予定されているトランプ大統領との首脳会談にある。

本来ならば、今年は、No.2の李洛淵総理を国連に派遣する予定だった。ところが、今月9日に北朝鮮の崔善姫第一次官が突如、米国に対話再開を呼び掛けたことで早ければ今月下旬にも米朝実務交渉再開の機運が生まれたことで急遽、文大統領自身がトランプ大統領に首脳会談を打診し、米国に乗り込むこととなった。

文大統領はチョ・グック法相の強行任命が仇となり、国内的には追い詰められているが、ギクシャクしている米国との関係が改善され、加えて米朝非核化交渉が一気に前進すれば、四面楚歌の国内状況を一変させられるとの計算が働いているのは確かだ。

仮に米韓関係が修復し、米朝交渉が進展し、それがトランプ大統領と金正恩委員長の4度目のご対面に繋がれば、凍結した南北関係も氷解し、文大統領が8月15日の記念式典で豪語した経済競争で「日本に克つ」構想が絵にかいた餅ではなく、現実のものになるとの読みもあるようだ。

文大統領としては具体的に今回の首脳会談でトランプ大統領から北朝鮮の非核化措置への見返りとして韓国が独自制裁をしている金剛山観光の再開と開城工業団地の再開、さらには南北縦断鉄道連結へのゴーサインを取り付けたいところである。南北縦断鉄道の開通は米国も参加する北東アジア鉄道共同体、東アジアエネルギー共同体と経済共同体への道に繋がるからだ。

そのためには何としてでもトランプ大統領との会談を成功裏に終わらせるしかないが、事は簡単ではない。米韓間には防衛費分担金問題や日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)問題など妥協が容易ではない難題を控えているからだ。

防衛費分担金問題では米国は韓国が限界線として今年の分担金約1千億円から5倍の5千億円の大幅負担増を求めており、GSOMIAも現状では日本が対韓輸出規制を解除しないかぎり、元に戻すことはできない。

従って、GSOMIAについては揺らぐ日米韓協調体制の再構築を大義名分にトランプ大統領に「日韓紛争」を仲裁するよう説得を試みるものと思われるが、最大の難敵は安倍総理も訪米し、トランプ大統領と会談することだ。

安倍総理は今日(23日)から26日まで訪米する。文大統領と同様に25日(現地時間24日)に国連で演説するが、トランプ大統領とは26日未明(現地時間25日午後)会談する。日米首脳会談は米韓首脳会談の後にセットされている。

文大統領とトランプ大統領との首脳会談が9回目ならば、安倍総理にとっては14回目の首脳会談となる。電話会談を含めると40回以上となる。トランプ大統領との親密度あるいはトランプ大統領からの信頼度では文大統領は安倍総理には太刀打ちできないのが実情である。

文大統領は安倍総理が表面的には米朝首脳会談や非核化交渉、南北首脳会談や南北関係改善に支持を表明しているが、裏では日本を頭越しにした核問題や米朝関係の進展、あるいは南北関係の前進を日本の安全保障上の観点から心底歓迎、支持していないとの懐疑心を抱いている。

実際に安倍政権は金正恩政権が強く求め、文政権も前向きの米韓合同軍事演習の中止や国連安保理の制裁緩和、戦争終結宣言や平和条約の締結、さらには非核化に向けた段階的なアプローチなどどれ一つとっても消極的な立場で、首脳会談の度にトランプ大統領に対して安易に妥協すべきでないと再三にわたって働きかけてきたのは周知の事実である。

安倍総理の北朝鮮問題、非核化への基本的なスタンスは完全で、検証可能で不可逆的な非核化が実現するまでは制裁緩和など体制保障すべきではないということなのでギブ&テイク方式による解決策を探っている文大統領にとってはまさに目の上のたん瘤と映っているようだ。

安倍総理は北朝鮮問題では再三にわたってトランプ大統領とは「100%共にある」とか、「日米は常に共にある」とか、「日米の立場は完全に一致している」と言及しているが、実際には北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射ではトランプ大統領が自衛の範疇として容認しているのに対して、日本は国連安保理決議違反とみなし、北朝鮮に抗議するなど隔たりがあるのは紛れもない事実である。それだけに日本が頼りにしていた強硬派のボルトン大統領補佐官解任後の米朝交渉の行方は安倍総理にとっても気が気ではない。

文大統領の外交成果は安倍総理の外交失点となり、逆に安倍総理の外交勝利は文大統領の外交敗北となりかねない。

トランプ大統領の右手を引っ張る安倍総理と左手を引っ張り込む文大統領による「訪米外交」は早ければ3日後にはその結果が判明する。

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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