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Apple、Intelと決別か? Macにも独自プロセッサーを採用する計画

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:ロイター/アフロ)

 先ごろ、米アップルが、同社のパソコン「Mac」に搭載するプロセッサーを、現行のインテル製から、自社で開発する独自のものに切り替える計画だと、海外メディアが報じて話題になった。

2020年にも独自チップのMac登場か

 米ブルームバーグによると、この計画は「カラマタ(Kalamata)」というプロジェクト名の下で進められており、2020年にも独自開発のプロセッサーを搭載したMacパソコンが登場する可能性があるという。

 この計画は、すでにアップルの幹部が承認している。今後、スケジュールが遅れたり、計画そのものが頓挫する可能性もあるが、もし、予定どおりに進めば、インテルにとって痛手になるだろうと、ブルームバーグは伝えている。

アップルには2つのメリット?

 ブルームバーグによると、独自開発のプロセッサーをMacに用いることは、アップルに2つのメリットをもたらすという。

 1つは、インテルという他企業の製品開発サイクルに左右されることなく、自社のスケジュールに基づいて、パソコンを開発したり、発売したりすることができること。

 米HP Inc.、米デル・テクノロジーズ、中国レノボ・グループ(聯想集団)、台湾エイスース(華碩電脳)といった大手パソコンメーカーは、いずれもインテル製のプロセッサーを採用している。

 もし、アップルが、独自チップを用いたパソコンを開発すれば、こうしたライバルよりも迅速に新機能を搭載することができ、製品の差異化が図れるという。

 また、独自プロセッサーの採用によって、アップルはハードウエアとソフトウエアを、より緊密に統合することができる。例えば、バッテリーの持ち時間が、より長いパソコンが登場する可能性があるという。

 現在、アップルは、スマートフォン「iPhone」、タブレット端末「iPad」、腕時計端末「Apple Watch」、映像配信端末「Apple TV」のすべてに、自社開発のプロセッサーを採用している。

 これらは、ソフトバンクグループが2016年に買収した、英国の半導体開発会社、ARMホールディングスの技術をベースにしている。

 そして、こうしたモバイルOSを搭載する機器とMacとの連携も、よりスムーズになるという。これがブルームバーグが指摘する2つめのメリットだ。

 すでにアップルは、iPhoneなどのOSである「iOS」と、MacのOSである「macOS」で、機能やシステムを一部共通化している。

 ブルームバーグによると、アップルは、「マジパン(Marzipan)」と呼ぶ、新たなソフトウエアプラットフォームも開発している。これは、iPhoneやiPadなどのアプリを、Macで利用できるようにするもので、最短年内のリリースに向け、開発中だという。

インテルのビジネスを脅かす動き

 前述したとおり、もしMacにも、アップル製プロセッサーが搭載されることになれば、インテルに打撃を与えることになりそうだ。

 インテルは、パソコン向けプロセッサーの市場を支配している企業。その年間売上高に占める、アップルからもたらされる売上高の比率は、5%程度で、さほど大きなものではない。

 しかし、アップルがきっかけとなり、他のパソコンメーカーも、自社プロセッサーを採用するような動きが広がれば、インテルが抱える不安は、より大きなものになると、ブルームバーグは伝えている。

 インテルの全売上高のうち、ノートパソコンやデスクトップパソコン向け半導体を手がけるクライアントコンピューティンググループの売上高比率は54%と、過半を占めている(2017年実績)。

(このコラムは「JBpress」2018年4月4日号に掲載した記事をもとに、その後の最新情報を加えて編集したものです)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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