補足1961年の麻薬単一条約は、大麻を地球上から根絶しようとした。加盟国は、この趣旨に沿って国内法を整備する義務があり、その遵守状況は国際麻薬統制委員会によって監視されている。同委員会は、違反国に対して医薬品の輸出入の制限を勧告するなどの制裁措置をとることができるが、大麻の合法化を進めている国はいずれも対外的には条約には違反していないと主張している。 大麻の法的地位に関するこの微妙な状況は、薬物政策が基本的に倫理問題と関連しているからであり、大麻の危険性は過大評価だという認識と、大麻を危険な麻薬とみなす条約の惰性との溝が深まっている結果でもある。 日本を含め大半の国々は、まだ大麻を禁止する強硬策を維持している。しかし十分な数の国が公然と大麻禁止政策から離脱すれば、国際的な大麻禁止は最終的に覆る可能性がある。国連が、単一条約におけるもっとも危険な薬物から大麻を削除したのは、その第一歩である。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。