見解タバコの煙は猛毒である。煙には数十種類の有害な化学物質が含まれ、喫煙は、肺がんや心臓病などのリスクを高める。したがってもちろん副流煙も危険である。副流煙への暴露も、肺がん、心臓病、喘息発作などの深刻な病状を引き起こすことが分かっている(子どもは特にそのリスクが高い)。路上喫煙の禁止は、いわば社会の流れである。 問題はそれを超えて、プライベートな喫煙の自由を否定し、犯罪化できるかどうかである。おそらくこれだけ広まった悪しき習慣を犯罪化することは、逆に法じたいの信頼性と強制力を失わせるであろう。タバコ依存症は犯罪の問題ではなく、公衆衛生の問題であることには反対はないだろう。 タバコによる害を最小限に抑えるためのわれわれの努力は、社会が有害な薬物によって晒されることの危険性と、その結果生じた害を減らすためにわれわれが取ることのできる最も効果的な措置とは何かということを示しているのである。
コメンテータープロフィール
1952年生まれ。甲南大学名誉教授、弁護士、元甲南大学法科大学院教授、元関西大学法学部教授。専門は刑事法。ネットワーク犯罪、児童ポルノ規制、薬物規制などを研究。主著に『情報社会と刑法』(2011年成文堂、単著)、『改正児童ポルノ禁止法を考える』(2014年日本評論社、共編著)、『エロスと「わいせつ」のあいだ』(2016年朝日新書、共著)など。Yahoo!ニュース個人「10周年オーサースピリット賞」受賞。趣味は、囲碁とジャズ。(note → https://note.com/sonodahisashi) 【座右の銘】法学は、物言わぬテミス(正義の女神)に言葉を与ふる作業なり。