提言「家庭教育は母親の役割」という性別分業が母親を精神的に追い詰め、それが行き過ぎると、母親による子どもへの「教育虐待」(子ども本人の意に沿わない教育を強制させ続けることで子どもが過度な慢性的ストレスを感じトラウマや精神的被害を経験すること)が発生してしまいます。父親が教育役割を1人で引き受けて追い詰められても、教育虐待のリスクが上がります。 大事なのは、教育の責任を親が1人だけで引き受けないことです。教育の責任は、両親ともにありますし、両親だけでなく、教員や近隣地域の大人たちにも、行政にもあります。そのため、親がすべきことは、教員だけでなく、行政の公的な無料相談窓口も含めて、我が子の教育について、たくさんの周囲の人たち(とくに専門家)に頼ることです。親1人や両親だけで育児や教育の悩みを抱え込むことこそが、親子のメンタルを悪化させ、結果的に子どもの発達に悪影響を与える、と認識すべきでしょう。
コメンテータープロフィール
1978年、東京都生まれ。京都大学総合人間学部卒業、京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。専門は社会学、幸福研究、社会政策論、社会変動論。同志社大学准教授、立命館大学准教授、京都大学准教授を経て、2023年度より現職。著書に『子育て支援と経済成長』(朝日新書、2017年)、『子育て支援が日本を救う――政策効果の統計分析』(勁草書房、2016年、社会政策学会学会賞受賞)、分担執筆書に『Labor Markets, Gender and Social Stratification in East Asia』(Brill、2015年)など。
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