暴力や脅迫は絶対に許されないことである。 ここ数年LGBT問題は、非常に「語りにくい」センシティヴな問題になってきている。私自身も、すべてのひとの包摂を願い、制度的な解決を話し合いでしていくべきだ、その際に暴力は許されないと書いたところ、個人への脅迫とともに、職場や関係各所にも連絡を呼びかけられたことがある。 もちろん、傷つく様々な当事者がおり、最大限の配慮がなされなければならない。 私個人は、こうした「差別」の問題解決は、個人の悪意の問題にとどまらず、大部分がどのような制度設計をするかという社会制度や合意の問題であると考えている。そのためにもオープンな議論が必要であると痛切に実感している。 この件が、どのような動機からなされているかは不明である。しかし、脅迫や暴力は、言論を委縮させるものである。皆が冷静になって、すべての人を尊重した議論の空間をつくることを望みたい。
コメンテータープロフィール
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、 武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。