ハーグ条約の趣旨は、子どもの処遇を決める際に、どの国の法律に基づくかにを決定するための民事に関する条約です(つまり、自分に都合のよい国に子どもを連れだすのではなく、子どもが住んでいた国の法律に従いましょうということ)。締結時には、現行の「単独親権」で構わないことが確認されています。 国内では日本の民法に従えばよいので、記事でも指摘されているように、「子の連れ去りは」本来、ハーグ条約とは無関係の事柄かと思われます。 別居後の子どもの監護のありかたは協議できることが望ましいですが、どちらかの親が子どもを連れて逃げる際には、協議できない緊急性を帯びた状況があることがあります。つまり暴力や虐待から、子どもを引き離す必要があることがあります。そういった暴力や虐待対応の法整備や体制づくりも、必要となると思われます。欧米のように加害者が退去させられ被害者が救済されるなら、逃げる必要はなくなります。
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コメンテータープロフィール
1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、 武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。