見解これらの「手厚い支援」を裏返すと、党と政府による家庭や女性の「価値観」への思想的介入が強まることを意味している。「子供を産まないことは個人の自由」という意識を変えるべく、さまざまな形で学習会やイベントを行ないながら、「党員ならば子供を」という空気を作っていくのではないか。それがいま推進されている「新結婚文化」であり「新生育文化」なのだろう。今回の支援も、その見返りとしての奨励策となるはずだ。しかし、一人っ子政策のように「産ませない」ことは政策的に可能でも、政治的・経済的インセンティブによって「産ませる」ことははるかに難度が高い。
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コメンテータープロフィール
ジャーナリスト、作家、大東文化大学社会学部教授。1968年生まれ。朝日新聞入社後、政治部、シンガポール支局長、台北支局長、AERA編集部などを経て、2016年4月に独立。中国、台湾、香港や東南アジアの問題を中心に、各メディアで活発な執筆、言論活動を行っている。著書に『ふたつの故宮博物院』『台湾とは何か』『タイワニーズ 故郷喪失者の物語』『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』『香港とは何か』『蒋介石を救った帝国軍人 台湾軍事顧問団・白団』。最新刊は『新中国論 台湾・香港と習近平体制』。最新刊は12月13日発売の『台湾の本音 台湾を”基礎”から理解する』(平凡社新書)』。