補足中国で増えるこうした無差別殺傷事件にはいくつかの理由が指摘されているが、そのうちの一つが「孤立」だ。アメリカのシンクタンク研究員Wang Yaqiuは「経済の悪化が孤立を促し凶悪事件を発生させやすくしている」と述べる。 中国では都市化やライフスタイルの変化で、多くの国より個人が孤独を感じやすい。調査会社Ipsosが2021年に行った調査で「孤独を感じるか」という質問に「ほとんど/まったく感じない」と回答した中国人は27%程度で、これは調査対象29カ国中、下から2番目だった。 とりわけ中高年ほど孤立を感じやすいという調査結果は多い。今回の事件の容疑者は62歳ととりわけ高齢だが、無差別殺傷の犯人に若者は少ない。9月に日本人男児を殺害した犯人は44歳だった。 とすると、日本と同様あるいはそれを上回るペースで高齢化が進む中国で、経済状況が悪化するなか、中高年が凶悪事件に向かう懸念は大きいといえる。
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コメンテータープロフィール
博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。アフリカをメインフィールドに、国際情勢を幅広く調査・研究中。最新刊に『終わりなき戦争紛争の100年史』(さくら舎)。その他、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『世界の独裁者』(幻冬社)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『日本の「水」が危ない』(ベストセラーズ)など。