Yahoo!ニュース

六辻彰二

六辻彰二認証済み

認証済み

国際政治学者

報告

見解中国当局がことさら警戒するのは不思議ではない。 習近平国家主席は救助に総力をあげるよう命じたと報じられている。しかし近年の中国では、やはり大災害が発生した時に同じようなかけ声がかけられても、支援不足などへの不満から各地で抗議活動が噴出している。 とりわけチベットは1950年に中国に編入されて以来、共産党体制への拒絶反応が強いだけに、この地震でそれがさらに増幅しかねない。 その導火線ともいえるのが、昨年2月の大規模なデモだ。これはチベット仏教の古刹を水没させ、数千人を強制移住させる巨大ダム建設計画に反対するものだったが、1000人以上のチベット人が逮捕されたといわれる。 こうした火の手が収まっていないなかで発生した今回の大地震では、チベット仏教の聖地の一つシガツェも大きな被害を受けた。そのためチベット人の精神的結束がこれまで以上に強くなり、ダライ・ラマの声はいつも以上に響きやすいと言える。

コメンテータープロフィール

博士(国際関係)。横浜市立大学、明治学院大学、拓殖大学などで教鞭をとる。アフリカをメインフィールドに、国際情勢を幅広く調査・研究中。最新刊に『終わりなき戦争紛争の100年史』(さくら舎)。その他、『21世紀の中東・アフリカ世界』(芦書房)、『世界の独裁者』(幻冬社)、『イスラム 敵の論理 味方の理由』(さくら舎)、『日本の「水」が危ない』(ベストセラーズ)など。

六辻彰二の最近のコメント