解説既にビジネスにとどまらず、政治でも影響力も発揮し、「共同大統領」と呼ばれるマスクの力を見せつける事態が年末にもあった。12月下旬、議会下院が、当面の資金繰りを支えるためのつなぎ予算案を否決し、政府機関が閉鎖される危機が高まった。共和党が過半数を握る下院は当初、与野党の指導部が合意した予算案を審議する方針だったが、マスクとトランプがXで予算案への反対を相次いで表明したことで状況が一変した。次期大統領トランプの反対が決定的だったことは間違いないが、Xという言論空間のオーナーであり、2.1億人のフォロワー数を誇るマスクの影響力も無視できない。大統領選の期間を通じてマスクの X投稿の閲覧数は急増し、今やトランプの15倍、アメリカの議員全体の16倍にのぼる。もはやその政治的影響力は無視できないものとなっており、ドイツなど他国でも、来たる選挙への介入への警戒の声が広がっている。
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コメンテータープロフィール
アメリカ政治・外交、国際関係論、平和研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、関西外国語大学助教、高崎経済大学経済学部国際学科准教授を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代-「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版会、2014年)共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』(ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社)。