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三牧聖子

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同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科准教授

報告

解説バイデン大統領は買収阻止の理由に「国家安全保障上の懸念」をあげたが、そう判断するに至った根拠は非公開であり、判断を覆すことは困難ではある。しかし政権内でもブリンケン国務長官やイエレン財務長官らが買収阻止に反対や懸念を示していたことが明らかになっている。バイデン大統領が買収阻止へ動いた背景に、来年の中間選挙への考慮があったことも否定できない。11月の選挙で民主党は大統領職、上下両院の多数派を共和党に奪われた。来たる中間選挙で巻き返すには、接戦州の労働者票は死活的に重要で、USスチールの買収に強く反対してきた全米鉄鋼労働組合の組織票は無視できない。その意味で、買収阻止の背景に、バイデン大統領の政治的意図を見出す橋本会長の指摘は的を得ている。現行の選挙制度では、接戦州の労働者票が選挙の帰趨にあまりに大きな影響力を持つことになっており、この点に米国の民主主義の行き詰まりを見出す人も増えている。

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コメンテータープロフィール

三牧聖子

同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科准教授

アメリカ政治・外交、国際関係論、平和研究。東京大学教養学部卒、同大大学院総合文化研究科で博士号取得(学術)。日本学術振興会特別研究員、早稲田大学助手、米国ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学研究員、関西外国語大学助教、高崎経済大学経済学部国際学科准教授を経て2022年より現職。著書に『戦争違法化運動の時代-「危機の20年」のアメリカ国際関係思想』(名古屋大学出版会、2014年)共訳・解説に『リベラリズムー失われた歴史と現在』(ヘレナ・ローゼンブラット著、青土社)。

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