「政商」マスク氏、異例の権力を手中に トランプ次期政権の決定に再三介入
2024年11月の米大統領選でトランプ前大統領の返り咲きを支えた実業家イーロン・マスク氏が、民間人として異例なレベルの「権力」を手にしつつある。行政の無駄と歳出カットを図る新組織「政府効率化省」のトップに起用されただけでなく、事実上の最側近と言えるほどの存在感を発揮して次期政権の意思決定に介入している。経営する電気自動車(EV)大手テスラや宇宙起業スペースXは、この権力から恩恵を受けるとみられ、現代の「政商」として成功しつつある。(時事通信社ニューヨーク総局 武司智美) 【写真】トランプ氏の専用機内でマクドナルドのハンバーガーを食べるマスク氏ら
邸宅入り浸り、いつも隣席
大統領選が投開票された11月5日以降、マスク氏は南部フロリダ州にあるトランプ氏の邸宅に入り浸り、ほとんどそばを離れていない。米国で家族が集まる祝日とされる感謝祭のパーティーでも、あるいはトランプ氏の専用機内でマクドナルドのハンバーガーを食べる際にも隣席を確保。スペースXの宇宙船打ち上げ現場をトランプ氏に案内し、蜜月ぶりを見せつけた。 「ここまでトランプ氏の近くにずっといて、嫌がられていない人は見たことがない」。米テレビの政治担当記者は、マスク氏が発揮しているコミュニケーション力に目を見張る。良好な関係は長続きしないと見る向きもあるが、今のところは保たれているようだ。 異例の存在感はまず外交分野に表れた。米メディアによると、トランプ氏が当選後、ウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談した際にマスク氏が参加した。マスク氏はスペースXの衛星通信サービス「スターリンク」を活用し、戦場での通信などでウクライナをバックアップしている。ゼレンスキー氏には支援を継続する考えを示したという。 要人との会談では、トルコのエルドアン大統領がトランプ氏に電話した際も同席していたとの報道がある。マスク氏がイランのイラバニ国連大使と秘密裏に会談したとの情報や、ロシアのプーチン大統領と定期的に連絡を取っているとの情報も駆け巡っている。