解説このケースは、素人同然の教師が片手間で部活指導をしていた事案と同列に評価することはできません。というのも、実刑判決を受けたのは、当時の県高体連の登山専門部専門委員長で講習会の責任者、副委員長で死亡した8人がいた1班の引率者と2班の引率者の3人であり、登山歴が長く、登山指導者の資格も有しており、当時の積雪状況などから雪崩の危険性を容易に予見し、事故を回避し得る豊富な知識と経験があったからです。 そこで裁判では、当時の積雪状況がどの程度だったのか、すなわち検察側は現場周辺の写真や積雪データ、雪氷の専門家の証言などから現場の斜面に30センチ以上の新雪が積もっており、雪崩が発生しやすい状況だったと主張する一方、弁護側は15センチ程度で大量の積雪ではなく、安全な訓練範囲を明確に定めて参加者に説明していたものの、先に進みたいという生徒らに押し切られる形で雪崩事故に至ったなどと主張していたわけです。
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コメンテータープロフィール
1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。