芸能人への「移籍・独立妨害」「芸名・グループ名の使用制限」は独禁法違反の恐れ…公取委、芸能事務所に近く見解
芸能事務所が俳優やタレント、歌手ら芸能人の移籍や独立を妨害する行為が、「優越的地位の乱用」や「取引妨害」といった、独占禁止法で定める違反行為になる恐れがある、との見解を公正取引委員会が示すことが分かった。公取委は問題行為をまとめた報告書を近く公表し、是正を促す。 【表】一目でわかる…芸能事務所の違反行為例
公取委は、番組や作品を生み出す「クリエイター」が適切な契約を結べる環境整備を進めている。その一環として、芸能人と芸能事務所の契約関係について、芸能人約30人への聞き取りや、芸能事務所へのアンケートなどを通じて実態を調べた。
芸能人らは公取委に対し、▽「退所の申し出が受け入れられず、退所までに5年以上かかった」▽「退所したいと伝えたら、『辞めたら潰す。芸能活動ができなくなる』と告げられた」▽「退所に向けた話し合いをしている中で、わがままな芸能人であるかのような悪評を流された」▽「元所属事務所が自分との共演はNGだと取引先に伝え、仕事がなくなった」――などと回答した。
公取委は、芸能事務所が強い立場を使い、取引相手である芸能人に不利益を与えていることなどから「優越的地位の乱用」などにあたるとみている。
退所後に芸名やグループ名の使用を制限している事務所もあり、芸能人からは「元所属事務所から『芸名の権利はうちがもっている』と告げられ、改名した」との声も寄せられた。退所した芸能人が芸名などを使い続けたいのに、事務所が認めないことは「取引拒絶」にあたる恐れがあるという。
「引き抜きはご法度」など、芸能事務所間の移籍は許されないとの認識が業界内にあるとも指摘し、共同で移籍を制限する場合は「不当な取引制限」として問題になるとみている。
公取委は2019年、ジャニーズ事務所(当時)から独立したアイドルグループSMAPの元メンバー3人について、事務所がテレビ局などに番組出演させないよう求めていた疑いがあり、事務所を注意した。吉本興業の所属タレントとの契約のあり方についても同年、問題視する見解を示したことがある。